多くの人が『人との対話』に苦手意識を抱いている。できればすべてメールですませたいという人すら。残念ながら「人と話すこと」をゼロにはできない。仕事となればなおさら。いったいどうやって克服すればよいのだろう。
答えは実はシンプル、あなたの発するひと言を変えるだけだ。周囲を緊張させたり、気持ちを萎えさせたりするNGな言葉から、その場の空気をあたたかくするひと言、自然な会話を生む言葉へと切り替えてみよう。
そこでいま話題を呼んでいるのが、3万人に「人と話すとき」の対話術を指導してきた人気ファシリテーション塾塾長の中島崇学氏の著書『一流ファシリテーターの 空気を変えるすごいひと言――打ち合わせ、会議、面談、勉強会、雑談でも使える43のフレーズ』だ。
今回は、同書から特別に抜粋。ミーティングや打ち合わせ、会議などで、「今日はなぜ集まったの?」という漠然と不安な空気がただよっているときに、それを一瞬で解消するひと言を紹介する。
集まった理由がわからないと、人は不安になる
もし、打ち合わせや会議の進行役を務めることになって、会場の雰囲気がカタいなと感じたとしても、「和ませてやろう」と最初からたくらむのはやめましょう。
まずは自分を整え、参加者に前向きな自己紹介で“空気をあたためるお手伝い”をしてもらったら、集まった目的をシンプルに伝えます。
空気がカタくなるのはみんなが「漠然とした不安」を抱いているからです。会合の目的が明らかになれば不安は激減します。
「現場が今どんな感じになっているのか把握したい」との意図で開く、報告が中心の会議も多くあります。上司の立場ならば、部員の動向が一度にわかるので、現状を把握するうえでは役に立ちます。しかし、部下の立場だとしたらどうでしょうか?
部下は日々の活動報告をメールやチャットで行っています。だから会議に出ても、「なんとなく集まっているけど、要するに目的は何?」と思っているケースが少なくありません。
冗長な説明は絶対避けたい
予算会議のようにテーマが明確に決まっている場合でも、「予算の可否が決まる」「今日は話し合うだけ」と目的がはっきりしていなければ、「どこまで話せばいいのだろうか」と不安になり、フラストレーションがたまります。こんなとりとめない説明の後ならなおさら。
×「移転後の新しいオフィスの使い勝手などで混乱しているとの声が多く上がっています。いろいろと不満もあるでしょう。そこで今日は関係者に集まってもらい、相談をすることにしました」
目的を明らかにして参加者の「不安」を取り除くことは、空気を変える第一歩です。
驚くほどシンプルに
○「今日の会議の目的は、新しいオフィスの整理整頓計画の立案です」
えっ? と思うほどつまらない言い方でしょう。でも、それがいいのです。
基本情報に創意工夫はいりません。自信をもって言い切りましょう。
旅行先で宿泊施設を探すとき、知りたい情報は「立地と値段と部屋の広さ」だけなのに、「リゾート気分が華やかかつラグジュアリーに味わえる、まるで天国のような体験をご案内して……」という説明を長々とされたらたらうんざりするでしょう。できるだけシンプルに目的を伝えましょう。
メンバーをドン引きさせるNGフレーズ
とはいえ、次のようなひと言を発してはダメです。
×「今日はこれまでとは違うかたちで、新しい会議を始めます!」
こんな抽象的なうえに否定的な言い方をしては、カタく冷たい場の空気がさらに凍りつき、永久凍土になります。「新しいことをします!」「まったく違うことをやります!」と宣言するのはやめましょう。
「変わろう、変わらなきゃ、変わるんだ!」とやると、みんなドン引きしてしまいます。
「新しいことをします」「大改革をします」というのは、今までのやり方を全否定することで、「お前らはダメだ!」と怒鳴るのとほぼイコール。
会議の空気を一瞬にして闘争モードに変えてしまうのです。攻撃を受けたと感じた人は、逃げるか、固まるか、反撃するかです。