「人と話すこと」に苦手意識をもつ人はたくさんいる。できればすべてメールですませたいという人すら。残念ながら「人と話すこと」をゼロにはできない。仕事となればなおさら。いったいどうやって克服すればよいのだろう。
答えは実はシンプル、あなたの発するひと言を変えるだけだ。周囲を緊張させたり、気持ちを萎えさせたりするダメなひと言を、その場の空気をあたたかくするひと言、自然に話したくなるようなひと言に変えてみよう。
そこでいま話題を呼んでいるのが、3万人に「人と話すとき」の対話術を指導してきた人気ファシリテーション塾塾長の中島崇学氏の著書『一流ファシリテーターの 空気を変えるすごいひと言――打ち合わせ、会議、面談、勉強会、雑談でも使える43のフレーズ』だ。
今回は、同書から特別に抜粋。相手との距離を縮めたいと思っているのに、ヘンな空気を作り出してしまう無意識のひと言で逆に心理的距離を広げてしまうケースと、それを回避するひと言を紹介する。

距離が拡がる自己紹介Photo: Adobe Stock

自己紹介だけで心理的距離が変わる

 自己紹介から始まる打ち合わせもや会合も多いと思います。普通のやり方では、なぜか緊張感が高まったり、お互いに身構える雰囲気になってしまいます。ところが、この自己紹介のやり方を変えるだけで相手との距離を縮めることができるのです。

 多くの司会や幹事は、出席者の自己紹介を促すときにこう言います。

●「名前とひと言、お願いします」
●「1人15秒ずつ、何か言いましょう」

 そんなとき、どんな発言をしたらいいと思いますか?

やりがち! 残念な自己紹介

×「営業課長の小林です。10人の部下をまとめていますが~」

「10人の部下をまとめていますが」の部分には、一流の会社に在籍していることや出身校、所属部署、肩書、実績、専門性、成果などが入りますが、要するに、「自分はこんなにすごいんだよ」と自己紹介し、弱みを見せないよう武装しているのです。武器をちらつかせて「自分は強い!」と叫んでいるようなものです。

 それだけでは嫌われると感じる人は、最後に謙遜を付け加えます。

×「未熟者なので、よろしくお願いします」

 この発言は本人が謙遜しているように受け取れますが、「強いけど、配慮もできて人格も良しです!」という武装の一部です。一人がこれをやると、聞いている周囲の人たちが身構えて防衛的な雰囲気になり、ホンネが出なくなります。

残念な自己紹介

「何を目的に来ているか」を伝える

「自分をよく見せなきゃいけない」という強迫的な空気が場を支配してしまうのです。
 そうならないように、自分が今やっていること、自分の貢献したいポイント、期待を伝える内容の自己紹介をしましょう。

「今、営業で新製品を担当しています。現場のナマの情報をお伝えすることで、今日は新製品の応援団を増やしたいと期待しています」

 自分については「営業」の新製品担当という事実だけで、ほかのアピールはなし。今日、自分はどういう立場で来ていて、何を目的に来ているかを伝えることで、その後の会話にスムーズに移行でき、場の空気も自然と和みます。

明るさをちょっと足すとさらに良い空気に

 今感じていることを、できるだけベタに表現するのがいいでしょう。余裕があれば、明るさ、元気さ、前向きさを比喩で表すと、さらに空気が良くなります。

●「チームに春風を吹かせていきたいと思います」
●「湖のような澄んだ気持ちで臨みます」

 自己紹介をちょっと工夫するだけで、場の空気は大きく変わります。凍りついた空気を解かすためにも、ぜひ取り入れてください。