多くの人が『人との対話』に苦手意識を抱いている。できればすべてメールですませたいという人すら。残念ながら「人と話すこと」をゼロにはできない。仕事となればなおさら。いったいどうやって克服すればよいのだろう。
答えは実はシンプル、あなたの発するひと言を変えるだけだ。周囲を緊張させたり、気持ちを萎えさせたりするNGな言葉から、その場の空気をあたたかくするひと言、自然な会話を生む言葉へと切り替えてみよう。
そこでいま話題を呼んでいるのが、3万人に「人と話すとき」の対話術を指導してきた人気ファシリテーション塾塾長の中島崇学氏の著書『一流ファシリテーターの 空気を変えるすごいひと言――打ち合わせ、会議、面談、勉強会、雑談でも使える43のフレーズ』だ。
今回は、同書から特別に抜粋。いきなり誰も発言しない重く凍った空気の時のひと言を紹介する。

ミラー・ニューロンPhoto: Adobe Stock

最初から重く凍った空気が

 打ち合わせや会議が始まっても、まったく発言が出てこない――冒頭からそんな重く凍った空気に包まれた経験はありませんか?

 かつて私も、若輩でありながら重役会議のファシリテーターを務めたとき、プレッシャーでつい、こう言ってしまいました。

「お役に立てるかどうかわかりませんが……」と。

「中島さんは謙虚でいいね!」という好印象にはもちろんならず、「この人、大丈夫なのか?」と参加者に不信感を与えてしまいました。

 ますます場が凍ったのは、言うまでもありません。

空気は伝染する

 パルマ大学のジャコモ・リッツォラッティ教授が1996年に発見したミラーニューロンの研究から、人は共感することによって他人の感情や意図を写し取ることが示されています。

 つまり、空気は人から人に伝染します。特にファシリテーターの影響力は強く、その言葉から空気がつくられるのです。

「この人に任せてみよう」という安心感を与え、「うまくやってくれそうだ」と思ってもらえれば、参加者が安心して自然体になれる空気が生まれます。

重たい空気をなんとかしたい

気持ちが冷えているときほど、言い切る

 まずは自分が「ベストを尽くす」と言い切ることから始めましょう。

 難しい取引先との商談に臨む。若手なのに大役を任されてしまった。場を仕切ること自体に慣れていない。そんなプレッシャーで自分自身の気持ちが冷え切っているときこそ、気概を示す言葉で空気をあたためましょう。

「チームのために私はベストを尽くします」

 チームでもいいし、プロジェクトでもいい。「この会議」でもいいでしょう。