アベノミクス・金融緩和による低金利で
株式・不動産市場は上昇したが
上昇傾向が続いている日本の不動産価格。不動産経済研究所の調査によれば、2023年度上半期(4~9月)の首都圏(東京都、神奈川、埼玉、千葉各県)新築マンション市場動向において、東京23区の平均価格は1億円超えを記録したという。また、関西では、JR大阪駅北側の「うめきた」エリアに建設されるタワーマンションが、関西最高額の「25億円」で売り出されるというニュースが話題となったばかりだ。
2023年に至るまで続く不動産価格高騰の始まりは2012年、民主党から自民党への政権交代の時期にさかのぼる。その後のアベノミクス、「黒田バズーカ」とも呼ばれる当時の日銀総裁・黒田東彦氏が打ち出した「異次元」の金融緩和策により、低金利時代に突入した。その期待感から株価は上昇し、不動産価格や住宅価格は同じような軌道でずっと上がってきたというわけだ。
しかし、上昇を続けているのはニーズのある一部の物件に限られている。「都心」「駅前」「駅近」「大規模」「タワー」といったワードに象徴される立地や条件のいいマンションが価格を押し上げる一方、それ以外の地域では下落傾向が続いている。「駅前・駅近」の条件に該当しなければ、都心から30~40キロメートルほど離れたベッドタウンでも価値は下がり続けている。さらに人口減で売れなくなるエリアもある。
以前からたびたび取り上げている“三極化”(「価格が維持、あるいは上がり続ける不動産」「なだらかに下落する不動産」「限りなく無価値になっていく不動産」)がより顕著に、よりくっきりとした輪郭を持って進行している、というのが「不動産価格高騰」の現状だともいえる。