晴海フラッグ、パークタワー勝どきという近年ない大型供給を控える東京湾岸タワマン市場。事前には相場の暴落を予想する声もあったが、果たしてその「答え合わせ」は?特集『2023年決定版 インフレ時代の「負けない」マンション売買・管理』(全24回)の#2では、都心マンション売買に精通した業界インサイダーたちが忖度なく語る座談会をお届けしよう。(聞き手/ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
●のらえもん @Tokyo_of_Tokyo マンションインフルエンサー、マンションアナリスト
●ふじふじ太 @fuji_fujita_kun 東京湾岸不動産コンサルティングマスター
●稲垣ヨシクニ @inagaki_kizuna 都心マンションソムリエ
●芝崎健一 @shibasan_towerz タワーマンション専門TOWERZ取締役 YouTube「芝塾タワマン不動産」運営
●デベマン マンションデベロッパーの中の人。開発担当
「『24年問題』、なかったね…。売り出しも増えたけど、それ以上に買い手が爆増してる」
――これから東京湾岸で晴海フラッグ(ハルフラ)、パークタワー勝どき(PTK)という大型マンションの引き渡しが始まります。湾岸の開発の歴史の中でも最大となるタワマン大量供給により、マンションの価格が下がる「湾岸24年問題」が懸念されていました。この言葉の発明者はふじ太さんなんですよね。どうでしょう、実際にその予兆はありますか?
ふじふじ太(ふじ太) 今のところはまったくないんです(笑)。確かに、これらのマンションに現在の湾岸タワマンから住み替える人が自分の家を売るため、マンションの売り出し件数自体は増えているのは間違いないのですが、それを上回るほど成約も増えているんです。今年9月の当社のマンション成約件数は過去2~3年でも一番多い。2022年の9月に約50件だった成約件数が今年9月は94件で、ほぼ倍増。売り出されたものがどんどん売れている感じ。
今後もこれは続くと思います。何度も言ってきましたが、24年問題で価格の大幅な下落を期待するべきではなく、「売り出し物件が増えるので、選択肢が広がるチャンスの年」と捉えるべきです。
のらえもん(のら) 24年問題、なかったですね……。そもそもマンションの需要が強いのに、新築の供給がさらに狭まり大規模マンションがすごく少なくて、築浅の築十数年のところに人気が集中する。湾岸エリアはそのあたりの物件の情報量が多い。新築並みに中古物件の発信があるのは東京湾岸だけなんですよね。そこに注目して来る人が多いんじゃないかな。
あとは、ハルフラとPTKが周りの中古需要をけん引してます。PTKが高過ぎるとか、ハルフラのスカイデュオ(タワマン棟)が人気で倍率高過ぎるなどで、両物件の検討から撤退して、周りの中古を求める動きが思ったより多い。
ふじ太 そう、スカイデュオとPTK同時に検討している人が多いんですけど、スカイデュオの抽選が終わった8月あたりから、倍率が高過ぎて当たらないと諦めた人が周りの中古に流れて、そこで成約数がぐいぐい伸びている。例えば、ドゥ・トゥールというタワマンが近所にありますが、7月には70平方メートルで9500万~9600万円だったのが今はほぼ全室1億円以上です。3カ月で400万~500万円上がった。
のら 実は住み替えによる売り出しはこれから本格化するんですよね。引き渡しは、ハルフラが24年1月から、PTKが24年3月くらいからだから。でもこの調子だとまあ普通に売れちゃうんだろうな。
ふじ太 以前の需要だけなら在庫が溢れてもおかしくなかったんですけど、これに加えて海外勢やら不動産会社がかなり高値買いをしているんで、増えた売り出し物件が全部売れているんですよ。今までの相場では考えられない金額でドカンと買うのは大体海外勢で、これに引っ張られる形で、値段がつり上がる。
のら 海外勢も中国本土の人じゃなくて台湾勢が買ってますよね。本土の人は今、外にお金を出すのが難しくなっている。あと台湾の人がマジに戦争リスクを感じてて、避難先を探してる。台湾ってお金持ちが結構なボリュームでいるので、その人たちが東京や大阪のタワマンを買いに来ている。
とどまるところを知らない都心マンション人気だが、他のエリアではどうなのか?そしてこの高揚は全てのマンション市場に共通しているのか?次ページからは大阪などの他エリアと郊外のマンション市場、そして市場の明暗についてメンバーが語っていく。