「価格が上がる」ことが前提の東京都内のマンション相場。だが、本当に賢く売買ができているだろうか?エリアの相場と当該マンションの相場の比較が鍵となる。エリアの相場よりも安ければ「買い得」、その逆なら「売り得」といえるだろう。特集『2023年決定版 インフレ時代の「負けない」マンション売買・管理』(全24回)の#4では、大手マンション情報サイト「マンションレビュー」の協力を得て、「買い得」度そして「売り得」度順にそれぞれ100マンションをランキングした。あなたの購入希望・所有マンションは何位?(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
エリアの伸びほど値上がりし切っていない「買い得」
エリアよりも値上がりしている「売り得」
いかに「値下がりしないマンション」を買うか――。マンションを買うときによく言われてきた注意事項だが、実はこれ、最近10年しかも首都圏でマンションを買う人にとっては少々ピントが外れた言葉である。なぜなら、築年数がある程度たっているなどのものでない限り、基本的にマンションの価格は中古・新築を問わず上がり続けているからだ。
大手マンション情報ポータルサイト「マンションレビュー」を提供するワンノブアカインドの調査によると、首都圏(茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・山梨県)全体での中古マンションの相場(70平方メートル換算価格)は、2013年と23年で比較すると75.4%上昇している。都心5区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)に至っては上昇率は83.8%に達しているのだ。
ここ10年、マンション相場は首都圏全体で大きく上がった。一方、都内をより短いスパンで見た場合、その上昇ペースには格差がある。
例えば同調査によると、都心5区の相場は22年10月から23年10月までの1年間で10.2%上昇しているが、この上昇幅は城西(中野区・杉並区・練馬区)では1.4%、城東(台東区・墨田区・江東区・葛飾区・江戸川区)では0.3%。さらに、城北(文京区・豊島区・北区・荒川区・板橋区・足立区)だと0.4%減となっているのだ。エリアによってその相場の動きはかなりバラバラだ。
さらに、相場の動きはより細分化が進んでいる。これまでマンション相場は、都心へのアクセスの良さや駅ごとの人気などが基準となりつくられてきた。ところが「同じエリアに再開発があったり新築マンションが建ったりする」「有名教育機関が近隣にある」など、行政区よりももっと細かい単位のエリアでのイベントにより、相場が動く状況が生まれているのだ。
例えば、本特集#2の座談会に登場する湾岸タワマンなどがいい例で、勝どきで大量の新築マンションが供給されると、それに誘引されて周辺にある中古マンションの価格が上がるという現象が起きるのだ。
こうした状況で少しでも「割安物件」を買うにはどうしたらいいのか。また、自分の物件を売却した場合にエリア相場と比べてどのくらい高く売れるのかを知るにはどうすればいいか。
鍵は、対象マンションを地番ベースで見たより狭いエリアの相場と比較することだ。そのエリアの相場がどのくらい上昇しているのか、そして対象マンションの上昇幅はそのエリア相場の上昇幅と比較するとどの程度大きいのかを見ればいい。
相場よりも上昇していないマンションは、上昇しているエリアの中でまだ価格が上がり切っていない、つまりまだ割安の「買い得」ということができる。逆に、相場を上回るほどの価格の上昇があるマンションは、何らかの理由でエリア相場よりも高く売れている、つまり売れば「売り得」になるということができるのだ。
ダイヤモンド編集部では、ワンノブアカインドの協力を得て、都内で17年から22年までに相場が10%以上上がっているエリアにおいて、2003年以降に建設され、さらに17年と22年に一定の取引があったマンションをピックアップ。新型コロナウイルスの感染拡大前の17年から22年までの間で、エリア相場の騰落率と物件取引価格の騰落率を比較した。
エリア相場の騰落率から物件取引価格の騰落率を引いて、その乖離が大きい順に100件を並べたのが次ページからの「買い得」ランキングだ。逆に物件取引価格の騰落率からエリア相場の騰落率を引いて、乖離が大きい順に100件を並べたのが「売り得」ランキングである。買い得上位にはドゥ・トゥールなどの有名湾岸タワマンや、今後開発が計画されるが見落とされている穴場マンション、売り得にはエリア相場を大きく上回る再開発マンションなどが並んだ。さっそくその中身を確かめてほしい。