なぜ「安倍派」の裏金が突出して多いのか

 政治資金パーティでノルマを超えた分をキックバックすること自体はまったく問題ない。問題はそれを「収支報告書に記載をしない」ということだ。

 では、なぜ記載をしないのかというと、普通に考えれば、後ろめたいことに使うカネだからだろう。では、政治家として後ろめたいカネとは何か。

 まず思い浮かぶのが“注射”や“実弾”というのは、半世紀前から現在に至るまでの政治の常識だということだ。

 そう考えると、なぜ「安倍派」の裏金が突出して多いのかということも納得ではないか。

 清和研究会(安倍派)にこれほど国会議員が集まったのは、「安倍晋三」という絶大な人気を誇るスター政治家と近しいことをアピールすれば、選挙に当選を果たすことができるからだ。つまり、表向きは、安倍氏と政策が近いとか理念を共にするとかなんとか言っているが、本音の部分は「安倍人気でどうにか政治家としての地位を守りたい」という人も多く集まってきてしまうのが、安倍派なのだ。

 さて、そこで冷静に考えていただきたい。安倍氏の力に頼りたいというくらいの候補者なので当然、選挙はそれほど強くない。いや、弱い。

 では、こういう「弱い候補者」が当選するためになりふり構わず力を注ぎ込むことは何か。

 もうお分かりだろう。それが“注射”であり”実弾”であり、そのための「裏金づくり」である可能性があるのだ。

 いろいろと差し障りがあるので、誰とは明言しないが、今回の裏金で額が突出して高い議員たちの「戦績」を見てみるといい。それほど選挙に強い人はいないはずだ。中には毎回、選挙区では負けて、どうにか比例復活を果たして再選している議員もいる。

 おそらく、特捜部もこの「裏金の額の多さ」と「選挙の弱さ」を結びつけているはずで、それが自民党をぶっ壊すのではないかと言われている所以だ。

 しかし本件は、安倍派だけを粛清したり、亡くなった安倍元首相に死人に口なしだからと言って、すべての罪を着せたところで何も解決できない。

 日本の「選挙制度」にまで手を突っ込まない限り、喉元過ぎればなんとやら……で、また違うスキームが編み出されて続けられていくだろう。