「政治にはカネがかかる」と言う詐欺師にだまされるな
では、このような根深い問題に対して、我々国民はどうすべきか。
まず大切なのは、相手は政治家ではなく、「詐欺師」だと認識することだ。例えば、よく政治評論家とかマスコミが「政治にはカネがかかる」というが、実はこれは振り込み詐欺グループが高齢者に電話をかけて、「おばあちゃん、会社のお金を使い込んじゃって今日中にお金を返さないとクビなっちゃう」とささやくのと同じで、パクリの常套句だ。
政治活動に関しては、すでに多額の税金によるサポートがある。にもかかわらず、「政治にはカネがかかる」と白々しいうそをつくのは、「選挙の弱い私が再選を果たして政治家の座に居座り続けるのには、いろんなところにバラまくためにカネがかかる」という本音を隠すためなのだ。
実際に、国民は「政治」という、なんとなく偉そうで、立派な響きのするワードでコロッとだまされてしまう。そしいて、「そっか、政治ってカネがかかるんだ、じゃあ、しょうがないか」と許してしまうどころか、しまいには自分たちの血税をプレゼントしてしまう。
事実、1990年代に汚職が続いた後、この主張を繰り返した政治家たちはこんなことを詐欺的なことを言い始める。
「国民がコーヒー1杯分の税金を払って政治活動を支えれば、今後は汚職のないクリーンな政治が実現される」
これが今の「政党助成金」である。これが真っ赤なうそだったということは、今回の裏金疑惑でもよくわかるだろう。
今回の裏金騒動もひと段落すれば、必ずどこからともなく「政治にはカネがかかる」「裏金をつくらなくても済むような政治改革が必要だ」とか言い始める輩があらわれる。
そして、ここがもっとも悪質なのだが、政治家というのは自分たちで法律をつくれるということだ。それはつまり、「裏金をなくすぞ」と新しい制度や法律をつくりながら、しれっと「裏金づくり」ができる抜け道もつくれるということだ。このマッチポンプが、80年以上も、「政治とカネ」の問題が延々と繰り返されたことが、一番の元凶でもある。
「政治にはカネがかかる」と言い出したら、「ああ、また国民のカネをパクリにきたな」と思うべきだ。
政党助成金の反省を胸に、今度こそたちの悪い詐欺集団にだまし取られないように気をつけたい。
(ノンフィクションライター 窪田順生)