生成AIでムダな投資を重ねる「残念な会社」2つの特徴…よくある致命的カン違いとは? SOPA Images / Gettyimages

ChatGPTの台頭を機に、あらゆる分野で生成AIの活用が進んでいる。だがビジネス界では、このテクノロジーが「あらゆる課題を解決する救世主」だと誤解し、ムダな投資を重ねている経営者もいるようだ。マッキンゼーのパートナーであり、長年データサイエンティストとして活躍してきた筆者が、生成AIブームの現状と本質を斬る。(マッキンゼー・アンド・カンパニー パートナー 工藤卓哉)

生成AIは「ビジネスの救世主」ではない!
データサイエンティストが緊急提言

 欧米などの先進国はもちろんのこと、インドをはじめとする新興国もデジタルトランスフォーメーションの成功によって経済成長を成し遂げた。一方、日本はいまだ名目GDPや労働生産性の低さから脱しきれず、出口の見えない苦境にあえいでいる。

 こうした状況のなか、急速に発展する生成AIを成長の起爆剤にしようと考える人々が日本でも増え始めた。政財界がこぞってChatGPTをはじめとする「生成AI推し」に傾いているのは、生成AIがもたらす経済効果に期待を寄せているからにほかならない。

 2023年にマッキンゼー・グローバル・インスティテュートが発表した試算によると、生成AIがもたらす経済効果は、今後数年で日本のGDPに匹敵する規模に達すると目されている。このことからもわかる通り、生成AIへの期待は新たなビジネス創出への期待であり、ひいては日本経済の再生に対する期待でもあるのだ。

 AIビジネスを牽引するのは、Magnificent Seven(Alphabet、Amazon、Apple、Meta、Microsoft、NVIDIA、Tesla)に代表されるビッグテックや、新進気鋭のAIスタートアップだ。

 各社の動向を踏まえ、メディアが喧伝する「生成AIを使わずして企業の未来はない」というメッセージに焦りを覚える日本の経営者も多いだろう。自社の将来を憂い、成長の糸口をつかむべく真摯(しんし)な経営者であればなおさらだ。

 筆者はこうした経営者を「流行に踊らされている」と笑うつもりは毛頭ない。むしろデータサイエンティストの知見やビジネスコンサルタントとしての経験を注ぎ込み、苦境から脱していただけるよう手を差し伸べたいとすら思う。

 だがその一方で、生成AIを「ビジネスの救世主」であるかのように語る経営者に同調するつもりがないのもまた事実だ。