日々の通勤時間は、人生を通じて考えると結構な時間が積み重なることになる。「経営の神様」と呼ばれた稲盛和夫氏は若かりし頃、この時間をいかに削るかを考え、ある案を実行に移そうとするが、自ら創業した京セラの役員全員から反対されてしまう。しかし、粘りに粘って交渉し、最終的にはその案を押し通す。いったい稲盛氏は何を始めたのか?(イトモス研究所所長 小倉健一)
通勤時間をいかに削るか
有効活用するかは大事な問題
コロナ禍を機に、世界中でリモートワークの浸透が進んでいる。例えば、JR東日本が10月31日に出した「2024年3月期第2四半期決算説明資料」によれば、鉄道事業は「鉄道利用の回復により対前年で増収、運輸収入はコロナ前比で約90%の水準」、バス事業は「高速バス回復により対前年で増収、高速線収入はコロナ前比で約60%の水準」と記されている。
コロナ禍の影響がまだ強かった昨年よりは「鉄道・バスの利用者」は増えてはいるものの、コロナ禍になる前よりはかなり減ってしまっているということである。
JR西日本の決算資料も読んだが、同じ傾向にあった。原因は二つあって、日本社会の現役世代が減っているということ、そして、リモートワーク化が進んでいるということだ。
リモートワークは、ビジネスパーソンでは歓迎する人が多い。特にシステムエンジニアなどは「絶対に会社へ行きたくない、行くぐらいなら会社を変える」という人も多いという。会社サイドや経営者の立場で考えても、都心の一等地で大きな面積をオフィスとして賃貸するのは、経営上のデメリットにもなり得よう。
しかし、リアルの対面で仕事をするというメリットが見直されているのも事実だ。特に、リモートワークは確認や連絡、ゆるい連携、上司から部下への伝達といった一方通行の業務には適している。一方で、協力や協議、感情を伝えること、表には出せないような相談事など、本来、組織が強みとしてきた役割については果たせないケースが多い。
会社の業績が悪いと、そうした部分には目をつぶって、とにかくリモートワークを推進し、経費を削るということになろうが、目に見えない組織の本来の強さをつぶしてしまうことになりかねない。どちらが正しいということではなく、組織と経営方針に応じたバランスを取っていく必要があるだろう。
そうなると、やはり私たちビジネスパーソンは、毎日満員の通勤電車に揺られる必要がまだありそうだ。例えば、日々の往復1~2時間をどうにかして削るか、有効活用したいものである。
あの「経営の神様」と呼ばれた稲盛和夫氏も実は、若かりし頃に通勤時間をいかに短縮するかを考え、実行に移していた。しかも、自ら創業した京セラの役員全員から反対されたのにもかかわらず、粘りに粘って最後は押し切ったという。いったい何を始めたのか。