「自信をつけるには、とっておきの方法があります」
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/種岡 健)
「自信」ってなんだろう?
「あなたは、自分に自信がありますか?」
そう聞かれたとき、自分に自信が「ある」と答える人は少ないです。
自信を持っていることを周囲に示すことに、少し恥ずかしさを感じることがありますよね。
「驕り高ぶっている」「謙遜を知らない人だ」と見なされることを恐れるかもしれません。
しかし、なぜ私たちは自信を持つことに対して、罪悪感や不安を感じるのでしょうか?
自信の本質とは?
日本には「出る杭は打たれる」ということわざがあります。
自信過剰になったり、驕り高ぶった生き物は後々になって痛いしっぺ返しを受ける、と昔から過剰なくらいに教え込まれています。
そんな謙遜を美徳とする生き方に私たちは慣れすぎてしまい、いつしか「自信を持つことは恥ずかしい、危ないこと」と考えるようになっているのかもしれません。
ですが、自信があるという状態は、「何かに秀でている」ことでも、「誰かより優れている」ことでもありません。
『自信をつける方法』として「自分の良いところを探す」「他人に褒めてもらう」などが挙げられますが、どれも自信とは根本的に異なります。
自信とは「自分はそのままでいいんだ」と、心から自分の価値を信じること、「ありのままの自分を受け入れられる状態」のことなのです。
自分のことを温かい目で見て、受け入れることができるかどうかが、自信と呼ばれる生理的な反応の本質なのです。
「自信がない」の価値
私たちは誰しもが他人と比較してしまう「自己評価のものさし」を持っています。ですが、自信にはそんなものさしは必要ありません。
誰かと比べるものではなく、自分をどれだけ肯定できるか、それが重要だからです。
また、私たちは「自信がある」という状態を「良い状態」と過剰に持ち上げてしまいます。
たしかに、自信のある人は自分の意見や考えを大切にできます。
彼らは楽観的で、自分の目標に向かって自信を持って進むことができ、不安を感じることも少なくなるでしょう。
ですが、自信がないと自覚できている人もまた良い点があります。
悲観的で慎重になれるぶん、失敗やミスは少なくなります。不安は感じやすいですが、それゆえ危険や恐ろしいことからいち早く身を守ることができるでしょう。
「自信がない=仕事ができない」というわけではありません。
私たち一人一人には、得意と不得意があります。
自信のある・なしで優劣を決めるのではなく、あなたの価値を知り、それを活かすことが本当の意味での「自信=価値」となるのです。
自分を見つけ直す方法
では、そんな「自信=価値」と気づくためには、どんなことをすれば良いのでしょう?
そのためには、自分の得て、不得手を客観的に見るような「メタ的な視点」を養うことが重要となります。
自分を客観的に振り返ってみて、評価がネガティブ、あるいはポジティブに偏り過ぎていないか、バランスを取ると良いでしょう。
たとえば、「日記を書く」という方法があります。
これは、一日の終わりに感じたことを書き出すことで、自分自身を客観的に見つめ直す手助けをしてくれます。
そうすると、自信がないと自覚している人はネガティブなこと、うまくいかなかったことばかり書き出してしまう自分に気づくでしょう。
そんな自分の苦手なことやコンプレックスを認め、それをポジティブな言葉に変える練習をすることで、あなたの中の思考の偏りにも気づくことができるでしょう。
例「完璧主義=仕事の質にこだわれる、几帳面」
「八方美人=協調性がある、チームワークが得意」
「でも、自分はミスばかりする人間で褒めようがない、ポジティブな面がない」
そう感じてしまう人は、自分の「解像度」がまだ低いのかもしれません。
・あなたがミスを繰り返す理由はなんですか?
・単純な連絡の不足や同じことを覚えられない、ならなぜ覚えられないのか?
・苦手意識のある人の言葉はストレスが強いので聞いても覚えられないのではないか?
・あるいは人間関係が複雑化し過ぎていないか?
・組織で孤立していてチェックが受けられないからではないか?
このように、自分の特性について客観的に整理して、見直す練習を繰り返すことで、「解像度」を上げていくことができるでしょう。
自分の価値を信じる、ということは人生を豊かにできる大切なことです。
あなたの周りにいる「この人は落ち着いているな」と思う人は、無意識にそんな価値を感じているのでしょう。
日記を書く、というのもあくまで一例ですので、どのような形でも自分の価値の解像度をあげ、自身にやさしく接することで、あなたと素直に向き合ってより深く価値を感じることができるでしょう。
あなたは、あなただけの素晴らしい価値を持っているのですから。
(本稿は、『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』より一部を抜粋・編集したものです)
精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医。
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。