麻生太郎・自民党総裁が誕生した。本格政権樹立を賭け、おそらく時をおかずして総選挙に打って出る。果たして、麻生氏は宰相の器であろうか。
この6月、景気の悪化に内閣府が言及して以来、太田弘子・前経済財政担当相はしばしば、その原因を「交易条件の悪化」と述べた。今回の場合、交易条件の悪化を一言で言い表せば、「輸入価格の上昇」である。
周知の通り、昨今の原油、各種資源、食糧などの一次産品の世界的高騰はすさまじい。それは、日本にとって原材料の輸入価格上昇、つまり、製造業の大幅なコストアップに直結する。価格転嫁は容易ではないし、価格転嫁したとしても売り上げが伸びなければ、業績は悪化する。傷口を広げまいと数量調整、減産が広がり始めれば、いよいよ景気悪化は本格的になる。
見方を変えれば、こうした日本の遺失利益は、一次産品の輸出国などの利益となる。つまり、輸入価格の上昇は、海外への所得移転を促す。
これが、交易条件の悪化である。だが、私の知る限り、麻生氏は総裁選で、この景気悪化原因に触れることはなかった。
麻生氏は、日本経済を全治3年と診断し、財政出動をためらわず、定額減税、投資減税などが柱――といっても、対象も規模も不明ではなはだあいまいだが――処方箋を公約とした。
しかし、正確に病因を把握できねば、適切な診断も処方もできまい。繰り返すが、今回の景気悪化の主要因は、国内に根ざしているのではなく、外発的なものであり、かつ、供給側が急激なコスト増と世界的な信用収縮余波によって追い込まれていることに問題がある。