Z世代のトレンドを深掘りする本連載。前回は初対面の店員が“タメ口”を使ってくる「友達がやってるカフェ」を紹介しましたが、似たコンセプトで注目を集めている飲食店はまだまだ他にもあります。お客さんの口に水鉄砲でテキーラを噴射したり、メニューの紙を無言で放り投げたり――。こうした「店員がわざと失礼な態度を取るお店」が、今の若者にウケているのですが、それはなぜでしょうか。その背景にある意外な要因を探ります。(芝浦工業大学教授 原田曜平)
店員がタメ口、テキーラ噴射
「メニュー放り投げ」まで登場
Z世代の研究を行っている、芝浦工業大学教授の原田曜平です。今回は、若者に支持されている飲食店の「意外なトレンド」についてレポートしていきます。
読者の皆さんは、飲食店での接客に何を求めるでしょうか。礼儀正しくテキパキと注文を取り、笑顔で料理を運び、グラスが空になるころを見計らって水を注ぐ――。大衆向けのチェーン店であれば、こんなところかもしれません。
ホテルのレストランであれば、品格ある所作や料理の知識の豊富さなど、よりハイレベルな対応を求めるはずです。その一方で、Z世代の若者に支持され、ネット上で「バズって」いる飲食店の接客は、実はその正反対。端的に言うと「店員がフランク、もしくは失礼だと若者にウケる」という奇妙なムーブメントが起きているのです。
その一端は、本連載の前回記事『「店員がタメ口のカフェ」がZ世代にウケた意外な理由、繊細な本音が見え隠れ』でも紹介しました。今年4月に東京・原宿にオープンして話題を呼んでいる「友達がやってるカフェ」は、「初対面なのに店員がフレンドリーすぎる」というユニークなコンセプトのお店です。
カフェを訪れたお客さんは、スタッフから「久しぶり!」「待ってたよ~」などと“タメ口”で迎えられます。店員が客に対して「またLINEするわ~」と気さくに話しかけている動画は、動画投稿サイトのTikTokで約270万回再生されています。詳しくは上記の記事で解説しているので、興味がある方はぜひ読んでみてください。
そして筆者は、さまざまな若者への調査を続ける中で、こうしたコンセプトで人気を集めている飲食店が「友達がやってるカフェ」だけではないことに気が付きました。
昔からあるお店では、鶏の唐揚げなどが人気のチェーン店「居酒屋それゆけ!鶏ヤロー!」がその代表例です。このお店は「串焼き1本99円」「レモンサワー1杯50円」などの安さも魅力ですが、それだけではありません。
「女性店員がお客さんの顔面にビンタする」「お客さんの口に水鉄砲でテキーラを噴射する」といった手荒なメニューを用意しており、若者を中心に口コミやSNSで話題を呼んできたのです。
新しいお店では、7月上旬に愛知県名古屋市にオープンしたばかりの「the LAZY HOUSE」も見逃せません。一見するとチーズ料理などを提供するおしゃれなお店なのですが、実はそのキャッチコピーは「日本一接客態度の悪いレストラン」。店員がお客さんに向けてメニューの紙を無言で放り投げるなど、にわかには信じられないような態度を繰り出してきます。