「新聞社をどう残すか」ネットメディアから移籍した記者・朽木誠一郎の考え朝日新聞社記者・編集者の朽木誠一郎氏 提供:Agenda note

徳力 メディアとして、健全に運営をし続けるという話ですね。

朽木 はい、「40代、50代のライターさんが少ない」という問題は、ずっと言われていますよね。今後はその状況が、もっと加速するのではないかと危惧しています。なぜなら紙メディアが崩壊したとき、受け皿となるネットメディアの市場規模が小さいからです。書き手が市場に飽和して、かなり荒れるだろうな、と。そのときに社会問題が発生してしまったとして、「書く場所がない」では困る。だから、今のうちからできることをしておきたいんです。

徳力 逃げ切れる、と思っている人もいそうです。

朽木 実際、逃げ切れる人もいると思います。だからこそ、僕は中間世代として上から「考えてもしょうがないよ」みたいなことを言われると、怒りを感じるんです。

メディアにできることは、まだまだある

徳力 新聞社と組むとき、クライアント企業の担当者は、何を意識すればいいのでしょうか。

朽木 私はマーケティングに詳しくないのですが、おそらく商品を売ることにフォーカスするのであれば、今まで通りの広告をした方がいいと思います。そうではなく販売よりも手前の段階として「こういう社会を実現したい」「良い社会の仕組みをつくりたい」というときにメディアと組むといいと思います。

徳力 先日、「ワールドマーケティングサミット東京2019」でフィリップ・コトラー教授が「すべてのブランドは、社会を良くするために活動しなければならない」とお話されていました。そう聞くと、すぐに売上につながらないのではと思ってしまいそうですが、ユーザーがメディア化している現代は社会を良くしようとしているブランドをユーザーが応援してくれるんだ、という話をされていたのを思い出しました。

朽木 そうですね。持続可能な社会で必要とされる存在でないと、企業も生き残っていけないと思います。おそらく私たちにできることは、まだまだたくさんあるはずです。

徳力 今までのマスメディアの時代は、枠を売るビジネスの手離れがいいし、ある意味分かりやすかったので、そこに特化していた印象があります。広告主であるクライアント企業もその仕組みに慣れていますよね。

 しかし、これからのクライアント企業は、自分たちのメッセージを消費者に伝えるための努力を立体的にする必要があるということでしょうか。その場合、具体的にはどんなことをしているのか教えてもらえますか。

「新聞社をどう残すか」ネットメディアから移籍した記者・朽木誠一郎の考え朽木氏(右)と徳力氏(左) 提供:Agenda note

 朽木 最初にフレームをつくるべきだと思って、今年はSNSのインフルエンサーの医師チームと共同で、医療情報発信についてのイベントを開きました。そのイベントは医師の方々の影響力のおかげで話題になり、Twitterで「日本のトレンド」に入りました。