村岡 いえ、あくまでもコンシューマーが軸なので、メディアで分けてしまうと、どのようにコンシューマーがメディアに接触しているのかが分からなくなるんですよ。

徳力 ネスレさんは、そこを徹底しているんですね。ただ、どうしてもすべてのメディアに詳しくなるわけではないから、専門性という意味では弱くなりがちな気がするのですが、そのギャップは、どう埋めるのですか。

スイス本社に赴任、ネスレの期待マーケター・村岡慎太郎の仕事術ピースオブケイクnoteプロデューサーの徳力基彦氏 提供:Agenda note

村岡 私の場合は、詳しいメディアの方に直接話を聞くようにしています。特にエキスパートと言われる人に話を聞いているんです。例えば、テレビであれば、広告会社の営業担当ではなく、テレビの窓口担当を紹介してもらっています。「この人、すごい」と思う人がいれば、直接会いに行きます。

積極的にカンファレンスに登壇する理由

徳力 だから、外部のマーケティングカンファレンスなどの場にも積極的に出ていくわけですよね。

村岡 その通りです。情報は取りに行かなければ、得られません。セミナーに登壇すると「出たがり」だと揶揄されることもありますが、それがきっかけで新しい話が入ってきたりしますし、名刺交換をした相手に私から話を聞きに行くこともできます。

徳力 以前から村岡さんに聞いてみたかったのですが、30代でカンファレンスに登壇するかしないかで出会いが変わり、その後のキャリアが変わってくる気がするんですよね。

村岡 そうですね。カンファレンスに登壇すれば、新しい情報に触れる機会が増えますし、世に言うマーケターの大御所と関わる機会も一気に増えます。昔あるイベントの打ち上げで、エステーの鹿毛康司さん(執行役 エグゼクティブ・クリエイティブディレクター)にしこたま怒られたことがあります(笑)。徳力さんもその場にいらっしゃったと思いますが、それは得がたい経験でした。

徳力 たしか、吉野家の常務取締役・伊東正明さんもいらっしゃって、すごいメンバーでしたよね。

村岡 はい、豪華メンバーに萎縮していたら、鹿毛さんから「お前がやっていることは立派なんだから、もっと自分を出せ」と。たぶん鹿毛さんは若いマーケターを育てないと、という意識をお持ちで初対面でしたが怒られました。

徳力 鹿毛さんからすれば、同じ登壇者なんだから、なぜそんなに自分を卑下するのかということだったのでしょうね。

村岡 はい、それがきっかけで、私は自分の視点を上げるように意識したんです。要するに、鹿毛さんたち大御所と自分のギャップを見つけて、それを埋めて追い付こうという意識に変えました。そうすると、大御所の発言をさらに深く読み解くことができるようになって、アイデアのレベルが良くなったように感じています。