西村氏は、ceroというバンドの事例を挙げながら「電子チケット制ライブ配信で行ったオンライン公演の評判がよかった。配信のチケット制は今後スタンダードになっていくのでは」と話す。
「知名度が低いバンドには、無料配信であったり、投げ銭システムを使うという選択肢もあるもしれない。配信を使ってのビジネスケースは出てきてはいるので、まだアイディアは固まっていないが何かができるはずだ」(西村氏)
今後、コロナ前の『今まで過ごしてきた普通の状態』に戻れる確証が今のところはない。人の集いが自粛される状態が今後何十年も続くという最悪の可能性もあり得るとtoeの山㟢氏は見ている。そのため、新たな可能性を模索する一方で、収益源を確保することが必須だ。
「新しいビジネスモデルを考えていく一方で、ライブハウスの運営者には目に見える日銭が必要だ。今回のプロジェクトで集まるお金が全ての救済に繋がるとは思っていないが、今思いつくことをとにかくやっている」(山㟢氏)
音楽好きである筆者が最後にFEVERを訪れたのは2019年7月。ロンドンのシューゲイザー・バンドThe KVBによる来日公演だった。その際にも強く感じたのが、演者と観客、そしてライブハウスという場が生み出す一体感、そして轟音を全身で感じられるのが、ライブの醍醐味だということだ。
「ライブハウスはバンドがいないと意味のない場所になってしまう。色々な選択肢はあるが、『バンドが大きな音を出せる場所』ということに特化していたい」(西村氏)