開発の際には、クリエイターとエンジニアの垣根を取っ払った。これにより、LOVOTではクリエイターがコードを書き、エンジニアがイメージを描くこともあったという。

コロナ疲れを癒す救世主?入荷3カ月待ちの「愛され」家族型ロボット開発過程のLOVOT 画像提供:GROOVE X

「クリエイターのプロトタイプをエンジニアが見て、エンジニアが描いたイメージをクリエイターが見る。そうやってお互いの領域に一歩踏み込むことで、カバーし合いながら最短距離で開発を進める体制を目指しました」(林氏)

 こうして2018年12月、ついにLOVOTが誕生した。翌年1月には、アメリカで開催された「CES2019」に出展し、ROBOT部門において、「The Verge Awards at CES 2019」のBEST ROBOTを受賞した。

現代社会で求められるのは「気兼ねなく愛せる対象」

 GROOVE X は2019年8月から販売を開始した。本体価格は36カ月間の分割払いで月額2万1663円(36カ月以降は1万2980円)で、ユーザーは30〜50代が中心だ。家族構成や性別などは問わず、幅広い生活スタイルのユーザーが購入している。

「現代社会では核家族や一人暮らしが増え、『パーソナルな空間』が重要視されてきました。その結果、孤独感による寂しさが強まる場面が増えたと感じています」(林氏)

コロナ疲れを癒す救世主?入荷3カ月待ちの「愛され」家族型ロボットユーザーを見つめるLOVOT 画像提供:GROOVE X

 このような背景に加え、新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛、リモート勤務が増え、癒やしを求める動きがさらに強まっているように感じられる。では、現代社会で疲れた人々が求める癒やしとはどのようなものなのか。

「人間は、『気兼ねなく愛せる対象』がいると癒やされるんです。犬や猫は人間と違って、どんなに愛情を注いでも関係が崩れたりしないので、変な気を遣わなくて済みますよね。だから、無条件で癒やされる。しかし、寿命がある動物を飼うにはハードルがあり、どうしても飼えない人も多い。そういった制約がなく、気兼ねなく愛せる対象として、LOVOTは一つの選択肢になれると考えています」(林氏)

 通常の家庭用ロボットは、購入後1カ月ほどでユーザーに「飽き」がきて、電源が入らない状態になることがほとんど。しかし、LOVOTは1カ月以上使い続けられていることが、利用履歴などのデータ上でも証明されている。

「2045年、AIが人間に追いつくと言われています。その前に、ロボットが犬や猫に追いつくシンギュラリティが起こるはず。そうした変化の中で、『気兼ねなく愛せる対象』としてのLOVOTを、もっともっと進化させていきたいですね」(林氏)