あまり聞きなじみのない言葉が並ぶが、これまで手がけてきた技術やプロトタイプの一部は動画やPDTのコーポレートサイトなどで公開されている。たとえば「Pixie Dust」は超音波で物体を浮かせたり、自在に動かしたりできる装置だ。また同じく超音波を用いた「Holographic Whisper」は、何もない空中のある一点に音源を作ることができる技術だという。また市販の車いすに専用のユニットを載せることで自動運転化できる「xWheel」などもある。
PDTでは「ある技術を活用したプロダクトを開発したい」、「自社の課題を何かしらの技術で解決したい」といった企業に対してコンサルティングを実施。自社および他社の技術を組み合わせて、課題解決のためのプロダクトを共同で開発している。検討段階のものも含めて、現在40社以上とのプロジェクトが動いているという。
「(製品は)これから世に出てきますが、NDA(秘密保持契約)を結ばないと話せないような内容ばかりです。ですがそんな状況でも資金調達ができているということは、企業がPDTをデューデリジェンスして、実際にパイプラインが動いているということの証明になっていると思います。研究自体には秘密性はないのに、PDTで開発しているものの秘密性が高いのは面白いですよね」(落合氏)
研究室の“成果”をそのままビジネスに利用できる座組み
PDTのコア技術は、筑波大学にある落合氏の研究室で開発されたもの。PDTでは、研究室で生み出されたIP(知財)をよりスピーディーに社会実装する、すなわち製品化して世の中に出していくために、特徴的なスキームを作っている。
通常の産学連携では共同で研究開発し、いざ製品化となる際、権利配分やライセンスの締結など調整の必要な内容が多く、どうしても時間がかかってしまう。そこでPDTは、筑波大学にある落合氏の研究室に対して新株予約権を付与し、研究室で生み出したIPを100%利用できるようにしている。これによって研究室の技術や知見を素早くビジネスに転用できるという。
「私たちは、大学発のスタートアップによくある『自分たちが研究していた技術でスピンアウトした会社』ではなく、『仕組みの会社』だと思っています。大学の研究成果を連続的に社会に出していき、それに対して企業から対価をもらい、それをまた大学に還元するという仕組みを構築しようと考えています。もともとの課題感は、日本のアカデミアの世界でやっている研究が世に出ていないということ。特許のライセンス収入も、実は米国と比較しても数十分の一ほどしかありません。そういうところに課題感を持っていました」(村上氏)