だが剣の場合、コントローラーを実際に振って敵に斬りかかる、敵の振り下ろした剣をよけるということに加えて、敵の剣を自分の剣で跳ね返す、といった処理が必要になる。そのため、当初は海外のサーバを介するマルチプレイではゲームの処理が間に合わなくなってしまった。マルチプレイをゲームの「キモ」だと考えていたこともあり、解決法を模索して当初予定よりも半年ほど販売が遅れた。

「Oculus(Facebook)の中の人間にも、『剣で対戦するマルチプレイゲームを作っているメーカーは(開発難度から)世界でもほとんどいない』と言われていた。最終的には二十数名のエンジニアで開発を進めた。VRゲーム専門の開発チームとしては、世界でもかなりの規模になっているのではないか」(新氏)

「VRの本質は何よりも『没入感』。いままで『観る』だったゲームの世界に入っていける体験の価値は大きい。このゲームではリアルな剣戟とマルチプレイ、巨大な敵との対決の3つの要素が没入感を生んでいる。逆に捨てたのは長時間プレイするということ。(剣を振るために)実際にコントローラーを強く振るので、一晩中プレイするというのは無理だろう」(國光氏)

VRゲームは「黎明期」を越えた

 ではその大きなチームを支え続けるほどに、VRゲームのマーケット規模は大きいのだろうか。

「Oculus GoやPlayStation VR、HTC VIVEなどをあわせた端末台数は2018年末で500万台ほど。Steamで昨年売り上げトップになったゲーム『Beat Saber』が100万本を突破して、総売上は2000万ドル(約22億円)くらい。それ以外にも、売上4億~5億円規模のタイトルが20本ほど出ている状況。これにOculus Questの台数がどれくらい乗ってくるかがカギになる。だが、『VRでも面白いゲームさえ出せばお客さんがついてくる』という状況は見えてきた。この数年『VRゲームはまだ黎明期』と言っていたが、その時期は越えたのではないか」(國光氏)

 コンシュマーゲームを見れば、Nintendo Switchの累計販売台数が3224万台、人気タイトルの「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」の販売本数が1381万本(いずれも任天堂の2019年3月期決算より)となっており、各社のVR端末の合計よりもまだまだ大きい。だが國光氏は、価格設定からもFaceookがVR普及に勝負をかけている、と分析する。