昨今、口コミサイトや検索サイトなどに業者が入り、信頼性が疑われる騒ぎになったことも少なくない。こういった背景から「意思決定のコストが上がっている」と甚田氏は指摘する。が正しい情報か見極めるのに苦労するからこそ、時間のない経営者の会食場所選びだけでも価値になると考えた。

資格を取得し、代理購入や旅行手配にも対応

 ユーザーからの依頼は飲食店の提案や予約内容の変更などが半分ほどを占めるが、前述のとおり代理購入や旅行の手配などもあるという。

 ただ、これらは資格のない業者が代行することは法に抵触するため、自社で古物商や旅行業の資格も取得した。他にもさまざまな依頼があるという。

「次に面会する人のことを知りたいから、その人のことがよく分かるインタビュー記事を送ってほしい、朝食、昼食をテキストや写真で送ってきて、夜に摂取可能なカロリーを教えてというリクエストなどもあります」(甚田氏)

 2年間のテスト期間では発見も多かった。その1つがユーザーの行動の変化だ。

「我々のサービスを利用頂いた方々は、GoogleやSNSで検索をしなくなったり、AmazonなどのECサイトを訪れなくなったります。消費行動のリクエストがすべて我々のサービスに集約される。また、代理購入は、一種の“電子ウォレット”のような扱いになる。これはこれまでになかった価値なのではないかと思います」(甚田氏)

 ただ、気になる点もある。ハイクラス人材をターゲットにするのであれば、ビジネス上の会食予約などは秘書の仕事と競合しないのかということだ。この点に関して甚田氏は次のように語る。

「僕たちも最初は競合するのではないかと考えていたんです。しかし、実際のところ秘書の方は、オフラインでの業務をたくさん抱えているので、競合ではなく秘書業務を補完するようなかたちでサービスを利用してもらっています」(甚田氏)

「事前登録のみ開始」の理由は品質維持のため

 2年間のテスト期間を経て、満を持しての事前登録を開始したmend。今後は事前登録したユーザーの一部からサービスを提供していくという。その理由について、甚田氏は「最初から多くの人へサービスを提供するとオペレーションが機能しなくなり、結果、高品質のコミュニケーションが取れなくなってしまうから」と説明する。米国では、2015年頃に「Magic」というSMSを利用したコンシェルジュサービスが話題になったが、ユーザーを拡大した結果、オペレーションが機能しなくなったと指摘されている。その教訓から同じ轍を踏むまいという気持ちもあるのだろう。