「感情に流される人は脳内であることが起こっています」
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/種岡 健)
それでもネガティブを強化する人
メンヘラになる自分を変えるためには、理性的な自分でジンクスをつくり、感情をコントロールして、「ハラ落ちする体験(トータル・コンビクション)」をするのが大切です。
そんな「ハラ落ちする体験」はすごく役に立つ一方で、
「使い方を間違えると、ネガティブな効果を強めてしまう」
ということについても、触れておかなければいけません。
というのも「ジンクス」は、マイナスな方向に働いてしまうと、ネガティブな思い込みを強化してしまう恐れがあるからです。
「私は、『絶対に』幸せになることはない!」
「今後の人生で自分が『絶対に』成功することはない!」
「僕には『絶対に』モテ期は来ない!」
というように、諦める気持ちをより強固にしてしまうのです。
特に、虐待やDV、いじめ、失恋などの大きなトラウマ体験が過去にあると、それに結びついたことをキッカケにして、ネガティブなハラ落ちをさせてしまいます。
「これ以上ダメだ」というブレーキ
たとえば、お酒を飲んで「ラクになった」と感じたことがあると思います。
取引先に怒られたり、職場で嫌なことがあったりして、ストレスを感じた日は、「パーッと飲もう!」と、お酒で解消するでしょう。
それによって、一時的に悩みや不安、ストレスを解消し、次の日には、「よし、頑張ろう」と切り替えられるのなら、なんの問題もありません。
しかし、その体験がクセになり、
「ストレスがあったらお酒を飲む。というより、お酒がないと生きられない。お酒だけが人生の生きがいなんだ」
と、依存症を引き起こし、体を壊してしまうと本末転倒です。
そのとき、脳内では何が起こっているのでしょうか。
最初は、「理性的な自分」によって、「お酒でストレス解消になる」と考えていたはずです。
それがいつの間にか、「これ以上飲んだらダメだ」という「理性的な自分」の声が自分に届かなくなり、「感情的な自分」が「もっと飲みたい」「現実を忘れたい」という思いをエスカレートさせてしまうのです。
このように、理性によって始めたことがネガティブな方向に結びついてしまう瞬間が、さまざまな場面で見られます。
異性からひどいことを言われたことで、「異性は自分の敵だ」と思い込んだり、好きな人に救われたことで、「殴られてもついていきたい」と信じ込んだりしてしまうのです。
それを見極めるのは、やはり「理性的な自分」が「これ以上はダメだ」と気づくかどうかです。
どうしてもマイナスな方向にハラ落ちさせてしまう人は、手ごわい「感情的な自分」に対処する方法を身につけましょう。
(本稿は、『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』より一部を抜粋・編集したものです)
精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医。
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。