chocoZAPの店舗RIZAPの新業態、コンビニジムの「chocoZAP(チョコザップ)」 Photo:SANKEI

会員数日本一のフィットネスジム爆誕――。開業から約1年で業界勢力図を塗り替えたRIZAPの新業態「chocoZAP(チョコザップ)」。その特徴は、これまでの常識を覆すアイデアと実行スピードの速さ、まさに「ブリッツスケーリング(電撃的成長)」です。一方、RIZAPグループは24年3月期第2四半期まで4四半期連続で営業赤字を記録。急拡大に伴う先行投資は、もろ刃の剣ともなり得ます。同社はそのユニークなビジネスモデルに秘めた力を次のステップへ生かせるでしょうか?(グロービス ファカルティ本部テクノベートFGナレッジリーダー 八尾麻理)

業界の風雲児「チョコザップ」
たった1年で会員数No.1に!

 夕方のオフィス街でスーツ姿の会社員が15分だけ汗を流す。マンションが立ち並ぶ住宅エリアで普段着の母娘がそろって入店する――。

 これは、月額3278円(税込み)で全国どこでも24時間・365日使い放題のコンビニジム「chocoZAP(チョコザップ)」の光景です。パーソナルジム大手のRIZAPが運営しています。

 人口減少下の日本のフィットネス市場はここ数年、国内外の大手がしのぎを削る飽和市場とみられていました。特にコロナ禍では、店舗の閉鎖が相次いだのも記憶に新しいところです。

会員数推移(出典)フィットネス各社決算説明資料より筆者作成
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 そこに現れたのが、チョコザップです。事業開始13カ月目の2023年8月に会員数80万人を突破して「日本一利用者の多いフィットネスジム」に躍り出ると、9月下旬には店舗数1000店を達成。さらに直近11月の決算発表では、会員数は101万人に上り、全国40都道府県に1160店を展開していると明かしました。1年半にも満たない短い間に、業界の勢力図を一変させたのです。

 一般に、実店舗を伴う新市場の開拓では、綿密な市場調査に基づいてリスクを評価し、まずは小規模な投資で市場ニーズとリスクを確認しながら、段階的に投資規模を拡大して安定的な成長を目指します。

 例えば、1996年に直営で日本1号店を出したスターバックス コーヒーの場合、国内1000店を突破したのは7年後の2013年。牛丼の吉野家はフランチャイズを併用していますが、国内1000店を突破したのは、1968年に2号店を出店してから実に36年後のことでした。業界は異なるものの、完全直営を貫くチョコザップの出店ペースがいかに異例の速さかが分かります。ただ、一つ歯車が狂えば、グループ全体の足かせにもなり得ます。なぜ、RIZAPはこれほどまでに新業態の拡大を急ぐのでしょうか?