今回のテーマは、「簡単な安全食品の見分け方」。
本連載では――贅沢やムダを省いて超効率化して得る「時間・エネルギー・資金」を夢に投資して、人生の可能性を最大化するための――戦略書『超ミニマル・ライフ』(四角大輔著)より、さまざまな人生術を抜粋していきます。ここから数回にわたり、諸説が飛び交い誰もが混乱している「食事学」について、最小限の労力で誰もが実践できる、明解なメソッドを公開します。
監修:三輪桜子/医師/神宮前統合医療クリニック院長
レムケなつこ/オーガニックビジネス研究所(IOB)代表取締役社長、オーガニック専門家
摂取するものは選び抜く
「あなたは食べたものでできている」
これは、「You are what you eat」という有名な英語のことわざである。今日、何を飲み食いするかで、脳と体のパフォーマンスが決まり、人生が決まるということ。
とはいえ現代は、飲食物に多種多様な「化学物質」が使われている上に、複合的な「環境汚染物質」が混入する。これらの物質を避けることは、もはや不可能に思えるかもしれない。
だが対策はある。その方法論は次のようにシンプルだ。
【飲食学の基本3ルール】
①セレクト:摂取するものは選び抜く
②ブロック:安易に体に入れない
③デトックス:悪いものはすぐ排出する
今回の連載では「①セレクト」に特化して解説していく。
日常的に摂るものはなるべく「無添加やオーガニック(有機栽培)」を選ぼう。いきなりハードルが高いと感じたかもしれないが、後述する「ミニマルな仕組み」さえ構築できればとても簡単なので、安心して読み進めてほしい。
無添加やオーガニックで避けられる物質
○遺伝子組み換え(GM)作物
○重金属
○家畜と養殖魚用の薬品(抗生物質やホルモン剤)
人体は、化学物質と重金属を分解できないため体の外に出そうとする。摂取量が多いと全てを排出し切れず、運動不足や体調不良によって代謝機能が下がることで、より蓄積してしまう。
そうやって体内に残留した有害物質は、さまざまな健康被害をもたらすことが報告されている。
遺伝子組み換え原材料の不都合な真実
日本が、世界で最も「遺伝子組み換え(以下GM)作物」の認可数が多い国で、その全てが輸入作物(※1)ということはご存じだろうか。
しかも、そのほとんどが「表示義務のない加工品」「家畜の飼料」として使われているから、我々が知る手立てはない。日本の食料自給率が低いことを考えると憂慮すべき事態である。
そして、ほぼ全ての「家畜飼料」に、GM作物が使われているという。GM作物が使われている「表示義務のない加工品」の一部をリストアップしてみよう。
○アイスクリーム ○清涼飲料水 ○スイーツ
これらは、一般的なスーパーやコンビニなどに流通するものの大半が該当すると思ってもらっていい。我々は知らないうちに、リスクのある飲食物を日常的に摂取しているのだ。
では、GM作物とはどういうものなのか。
今や多様なものが存在するが、その代表例は「除草剤に耐性」がある遺伝子と、「害虫に毒性がある」遺伝子が組み込まれた作物である。
「除草剤で枯れず、虫を寄せ付けない作物」を誰も食べたいと思わないだろう。
2023年4月から、豆腐・納豆・味噌・スナック菓子などの主要な加工食品と、大豆やジャガイモなどの農作物で表記ルールが複雑化したが、次だけ知っておけば大丈夫だ(※2)。
・GM使用率0%:「遺伝子組み換えでない」という表記
・GM混入の可能性5%以下:「遺伝子組換え分別」「遺伝子組換え混入防止管理」などの“GM混入を避ける姿勢”を伝える表記
薬物が濫用される食の裏側
GM問題はセンセーショナルなので報道されやすい。だが、見逃されがちなのが「工業型の畜産・水産業」で大量使用されている薬物だ。
世界に存在する抗生物質の50~80%が「畜産」に活用され(※3)、さらに「魚の養殖」でも使われているという。
そして残念ながら、日本の畜産業と養殖業のほとんどが工業型だ。本来は「病気の予防と治療」のための抗生物質が「ホルモン剤」と一緒に成長促進剤としても投与されるようになり(※3)、使用量が右肩上がりで増えているという。
オーガニック食材は、「合成農薬」「化学肥料」に加えて、これら「抗生物質」「ホルモン剤」「GM技術」も禁止されているから安心なのだ。
さらにオーガニック農法は、合成農薬と化学肥料を使う「工業型農業(慣行農法)」に比べて、カドミウムのような有害な「重金属」の摂取リスクが低いこともわかっている(※4)。
ケミカル大国ニッポン
そして、日本が世界有数の「(合成)農薬大国」であることはご存じだろうか。2014年までは単位面積あたりの使用量はワースト3の常連だった(※5)。
直近の2019年の調査でも7位(※6)と上位にいて、農薬使用量そのものは、中国の「1haあたりの使用量は13kg」に対し、日本は「11.4kg」と若干少ない程度。
主要国と比較すると、インドの30倍、スウェーデンの20倍、デンマークの10倍も使っており、米国の5倍、スペインやブラジルの3倍だ(※7)。
そして、日本のオーガニック認証を取得した農地の割合はわずか0.2%と──イタリアやスペインの足元にも及ばず、中国の0.4%よりも低い(※8)。
ちなみに、「化学肥料」と「合成添加物」に関しても、使用量が際立って多いグループに属するので、残念ながら日本は「ケミカル大国」と言わざるをえない。
だが希望もある──工業型農業を推進してきた農林水産省が方針を変え、2050年までにオーガニック農業を農地全体の25%まで引き上げると発表した(※9)。
昔は全てが自然でオーガニックで無添加だった
歴史を見ると、「(化学合成された)農薬と肥料」「抗生物質」が使われるようになったのは1930~50年頃からで、「(合成)添加物」の歴史はもう少し古くて1850年頃。日本で見ると、これらが一般に普及したのは戦後だから70年ほどしか経ってない。
つまり、約1万年前の農業革命が起きてから99.3%の期間ずっと、日本の全農地がオーガニック栽培か自然農法で、全食物が無添加だったということ。
250万年の人類史で見ると、化学物質を摂り始めたのは「最近」のことで、人体にとって「無農薬・無化学肥料・無添加」は、当たり前のことなのである。
「オーガニックなんて特別なのじゃなく普通でいいよ」
時々そんな声を耳にするが、本来は「オーガニックこそが普通である」と強調しておきたい。
とはいえ、合成農薬と化学肥料を使う「工業型農業」は、大量生産を容易にし、飢餓対策の一役を担ってきた側面もある。だから、これらの発明は決して悪ではない。
だが、合成農薬と化学肥料の過剰使用は、環境と土壌を汚染するだけではなく、生産者の健康被害まで引き起こす(※10, 11, 12, 13)。自然の摂理に反する工業型農業がもたらす代償は、非常に大きいと知っておいてほしい。
簡単な安全食品の見分け方
お店で選ぶ際は、日本の「有機JAS認証」か海外の「オーガニック認証」がついた食材や飲食物、もしくは「自然栽培」の作物を選ぶこと。
これで、前述したさまざまな危険物質を避けることができる。
日本ではこれまで、これらの認証マークの商品を販売するのは一部の専門店だけだった。今や流れが大きく変わり、「AEON」や「成城石井」を筆頭に、大手スーパーが積極的に販売するようになってきた。フランスの有名オーガニックコンビニ「ビオセボン」も関東を中心にチェーン展開している。
農林水産省が2020年に発表したレポート「有機農業をめぐる事情」によると、実際に、過去10年で日本のオーガニック市場は1.4倍、世界では約2倍の伸びを見せている(※9)。
この潮流は本物で、間違いなく今後も続くだろう。日本が、欧米の水準に追いつく日も近いと確信している。
お店ですぐ見つけられるよう、日本で流通している公的基準を表すマークと、民間基準のマークの有名どころを並べておくので、参考にしていただきたい。
(本記事は、『超ミニマル・ライフ』より、一部を抜粋・編集したものです)
【参考文献】
※1 ISAAA「年度遺伝子組換え/ GM 作物商業栽培の世界状況」(2017)
※2 NHK「遺伝子組み換え食品の表示 4月の改正で何が変わった?」(2023年4月19日)
※3 Cully, M., 「PUBLIC HEALTH The politics of antibiotics」 Nature, 509(7498): p. S16-S17.(2014)
※4 Barański M, Srednicka-Tober D, Volakakis N, Seal C, Sanderson R, Stewart GB, Benbrook C, Biavati B, Markellou E, Giotis C, Gromadzka-Ostrowska J, Rembialkowska E, Skwarło-Sońta K, Tahvonen R, janovska D, Niggli U, Nicot P, Leifert C. Higher antioxidant and lower cadmium concentrations and lower incidence of pesticide residues in organically grown crops: a systematic literature review and meta-analyses. British Journal of Nutrition, 112(05): p. 794-811. (2014)
※5 Industry reports, Analysis by TATA Strategic(2014)
※6 FAO「Pesticides use, pesticides trade and pesticides indicators 1990-2019」(2019)
※7 竹下正哲『日本を救う未来の農業─イスラエルに学ぶICT農法』ちくま新書(2019)
※8 農林水産省「平成24年度 食料・農業・農村白書:単位面積当たりの化学肥料・農薬使用量の国際比較」(2012)
※9 農林水産省「有機農業をめぐる事情」(2022)