「仕事地図」や自己表現で自分を客観視していく
「経験学習」に続いて、次の学習目標「仕事の現場を客観視し、自身の現状と今後の課題を説明できる」に向けたワークに移った。最初に行うのは、「仕事地図」の作成だ。「私」を中心に、上司や同僚など、自分の周囲にいる人たちの名前、その関係者間で発生する業務の流れを書き込み、現在の仕事がどのような要素でできているのかを図解するのだ。「仕事地図」は、接触頻度や重要度など、関係者間の「つながり」に差をつけ、やりがいや違和感などの仕事への「思い」も書くという点で、かなり主観的なものだ。それぞれの地図が出来上がった後は、再び対話の時間が設けられ、今回はグループではなく、ペアかトリオを組んでお互いの地図について説明し合うことになった。「なるべく違う職種の人と組んで、あなたの仕事内容を知らない人に説明するつもりで話してみましょう」と、内山講師が指示する。他者に対してわかりやすく説明することは、自身の業務内容の再確認になるだろう。
そして、作った「仕事地図」を見て、次は周囲からどんな期待をされているかの「役割期待」について考えていく。「仕事地図」に書き込んだ内容が主観的なのに対し、こちらは客観的な視点で業務を見ることになる。前回のフォロー研修と比べると、より深く踏み込んだ内容になっている印象だ。この「『フレッシャーズ・コース2023』を活用した自律型新入社員研修」の開発者でもある内山講師に、研修終了後に、研修の意図を尋ねた。
「夏の時点では、新入社員の皆さんはまだあまり経験がないので、『自分の会社の仕事を紹介する』というワークにとどめました。今回は、そこに主観を足して、他者とのつながりと自分の思いを確認し、もう一歩深く、経験学習につながるようにワークを設計しました」(内山講師)
次は、最近の仕事経験から、自分にとって大きな意味があったと感じる出来事を紹介する。ここでは、ワークシートを使わず、グラハム・ギブスの「リフレクティブ・サイクル」と呼ばれる6つのステップをもとに、各受講者がブロック(玩具)を使って作品を創り、表現することになった。各グループにブロックが入った袋と、人形や小物のパーツが入った袋が配られ、受講者たちはブロックの組み立てに熱心に取り組んだ。内山講師によると、ブロックを触りながら手を動かしていくことで脳が活性化するという。組み立てが終わった後は、グループ内で自分が表現したエピソードを紹介し合っていく。「相手から質問を受けたら、無理やりでも、後付けでもいいので、全部答えるようにしましょう」と、内山講師。答えをひねり出すことによって、自分では意識していなかった感情に気づき、経験からの教訓を得られるようだ。
完成したブロック作品を見ると、あえて人形を使わずに花を配置したり、不思議な建造物があったりと、まさに多様。各自で作品にタイトルをつけ、写真を撮ってワークは終了した。作品を俯瞰で眺めることは、自分の業務を客観的にとらえることに通じる。写真を見返すことも、リフレクション(振り返り)の一環になるのだろうと、私は思った。