今年2022年の4月も学校卒業者の多くが社会に飛び立った。就職した大卒者は約43万人*1――「22卒」である彼・彼女たちのほとんどは、2020年の夏に企業のインターンシップを経験し、2021年に採用面接を受けた「コロナ就活」の経験者たちだ。新入社員として企業に入り、どのような研修を受けて、社会人の心得を身につけていくのか。都内で2日間にわたって対面で行われた、“公開型”新入社員研修の様子を「HRオンライン」がレポートする。(フリーライター 狩野 南、撮影/HRオンライン)
*1 文部科学省2021年12月公表データによる「HRオンライン」の推測数字
一期一会の新入社員たちが挨拶を交わし…
今年(2022年)の4月初頭に、都内某所で2日間にわたって行われた新入社員研修を見学取材した。研修名は「『フレッシャーズ・コース2022』を活用した自律型新入社員研修」――「フレッシャーズ・コース*2 2022」(以下、「FC」)は、企業の入社予定者が学校卒業までの“内定期間”に学習するテキスト教材だ。多数の企業が参加する当研修は、そのFCの内容*3 をもとに行われるもので、取材した2日間だけではなく、複数の別日も設定されていた。当然、当研修を行う講師も多人数となり、研修前には講師陣たちが勉強会を行い、当研修プログラムならではの“新入社員への教え方や伝え方”のノウハウを共有したという。
*2 「フレッシャーズ・コース」(ダイヤモンド社)は、全7巻ワンセットの新卒内定者フォロー教材。毎月1巻ずつ6カ月間、継続した内定者フォローが可能になっている。
*3 「フレッシャーズ・コース2022」の内容は、第1巻「働くことの意味」、第2巻「社会人としての常識力」、第3巻「コミュニケーション」、第4巻「社会人としての自己管理」、第5巻「自分の頭で考える力」、第6巻「会社の仕組み・仕事の仕組み」、第7巻「ビジネスマナーハンドブック」、付録「コミュニケーションペーパー」。
2020年と2021年の新入社員研修は、コロナ禍によって、オンラインによる研修が一気に増えたが、今年2022年は対面での研修も目立ったようだ。
今回、私が取材した研修は、受講者がひとつの会場で対面して行う「集合型」スタイル*4 だ。そして、さらに「公開型」と称されたもので、複数企業の新入社員が一堂に会して行われる研修だった。当日は、さまざまな企業の新入社員たちが研修会場に足を運び、11社24名で行われたひとつのクラスをうかがうことにした。
*4 2022年度の当研修は、集合型のほか、オンライン型での公開研修も実施された。リモートワーク中心の企業や、地方の企業・拠点からなど、各地から新入社員が参加し、オンラインで社会人としての心得を身につけていった。そのほか、企業内で実施するインハウス型の研修もある。
研修の開始時間に合わせて、受講者である新入社員たちがポツポツと入室してきた。多くの者がダーク系のスーツを着て、やや緊張した表情だ。A・B・C・Dの4グループに分かれ、それぞれの名札が置かれたテーブルに6人ずつ腰かけていく。各グループは男女ほぼ半数。クラス内には同企業の新入社員もいるが、グループでは分かれ分かれになり、ひとつのテーブルを囲む6人のメンバーは誰もが初対面のようだ。皆がぎこちなさを隠せない感じに見える。
定刻どおり、午前10時に研修がスタート。初日のメイン講師は鈴木麗子さんで、サブ講師を近藤敏弘さんが務める。まずは、挨拶の方法から。「立って椅子を戻し、姿勢を正して『おはようございます』と言ってからお辞儀をしましょう」と、鈴木講師が受講者24人に向かって、元気よく声をかける。言葉を先に発してからお辞儀をする「語先後礼」は挨拶の基本だが、新入社員たちには新鮮だった様子。“席を立ったら椅子を戻す(=椅子を机やテーブルに近づける)マナー”を知らない人も多かったようだが、一度学んでからは、自ら意識して行ったり、動作を忘れた人に他の受講者が教えたりする場面が見受けられた。
挨拶を終えた後、鈴木講師から、この研修のテーマである「自律型」についての説明があった。当研修における「自律型」の意味は、座学を一方的に受けるのではなく、能動的にたくさんのグループワークに参加し、内定期間中に「FC」でインプットした内容を実践していくこと。研修への積極的な参加をグランドルールとし、指示されたことは自分たちで判断して動き、一歩先を考えて行動することを重視していく。
「先の見えない時代に求められるのは、どんな状況にも柔軟に対応できる人材です。自分の頭で考えられる人になってください」と、鈴木講師がメッセージした。
まず、新入社員たちは、自分のグループ全員の顔と名前を覚え、リーダーとサブリーダーを話し合いで選出し、それを記した「グループ座席表」を講師に提出していった。自己紹介をスピーディに行う方法や座席表作成の工夫をグループ内で考え、その後、「元気」(大きな声と機敏な動作)「反応」(双方向のリアクション)「ノート」(きちんとメモをとる)という“研修全体のグランドルール”に、各グループ独自のルールを加えるワークがあり、全員の話し合いで決まった結果を発表した。「アクティブ」「聞く人の立場に立って笑顔を」など、早くも、グループごとの個性が言葉に表れていく。座学とは異なるスタイルで身につく学びが、受講者に大きな気づきをもたらしていく――そんな予感が私の中に生まれた。