今後、尹錫悦政権の支持率回復にとって重要となるのが経済の動向である。特に選挙のカギとなる若者が世代間の格差に抱く不満を、どこまで解消できるかが重要であろう。
文在寅政権の対北朝鮮政策に対する不信感も若者の間では強いため、選挙が左翼系に有利になるかは不透明だが、いずれにせよ、尹錫悦政権にとって厳しい選挙になることは間違いないだろう。
尹錫悦政権が日韓関係の改善を進めるためには世論を味方につける必要があるが、選挙に敗北すれば、日韓関係について、より慎重に取り組まざるを得なくなるだろう。
尹錫悦大統領の対日姿勢に
影響を及ぼす日本の対応
日本では、韓国の政権末期になると大統領の対日姿勢が強硬になるとの見方をする人が多い。過去においては確かに、政権発足当初は日韓関係を進めようとする人が多かった。前述の左派政権の代表格である盧武鉉大統領も、例外ではない。
しかし、盧武鉉大統領が反日に転化したのは、日本で言われるように政権末期になったからではなく、小泉純一郎首相(当時)が靖国神社に参拝したため、盧武鉉大統領が小泉首相に失望し、同首相とは日韓関係の改善を図ることができないと考えたからである。
反日姿勢が顕著であった文在寅大統領の後で、日韓関係のイニシアチブを発揮したのは尹錫悦大統領である。
日韓の懸案であった元徴用工を巡る日本企業の資産を現金化する動きを封じ、韓国国内で寄付を募って元徴用工とその遺族に賠償する解決案を策定した。尹錫悦大統領はこうして日韓関係の障害を取り除いたうえで訪日し、各種政府間協議を復活させて日韓関係強化の足掛かりを築いた。また、経済関係でも日韓交流・強化の道筋をつけた。
こうした韓国側の努力に応えたのが岸田首相である。尹錫悦大統領の訪日から約2カ月後に訪韓し、尹錫悦大統領のイニシアチブに応えた。また、広島で開かれたG7首脳会議に出席した尹錫悦大統領と共に広島の韓国人原爆犠牲者の碑を訪問し、哀悼の意を示した。こうした行動は韓国人の心も打ったはずである。
尹錫悦大統領と岸田首相が日韓関係改善に取り組む姿勢は相互の信頼に基づいており、二人が首脳でいる間は大きく崩れることはないだろう。しかし、日本の国内政局により、仮に首相交代となれば、相互の信頼関係を初めから作り直していかなければならない。
政権交代となれば、最初の出会いが肝心である。そこで歩調が合わなければ、日韓関係は後退することになりかねない。日韓関係からみれば、岸田政権が継続することが最善である。