韓国総選挙で与党が敗北すれば
市民社会の改革は遠のく

 韓国で歴史問題をめぐり反日活動が活発な要因は、「民主社会のための弁護士会(民弁)」などの左翼系弁護士団体が、元慰安婦や元徴用工を探し出して政府を追及し、損害賠償訴訟に持ち込むなど、日韓の政治問題として取り上げたのが発端である。

 その後「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連、艇対協から改称)」などの市民団体が先導役となり、北朝鮮ともつながりのある全国民主労働組合総連盟(民主労総)なども加わって反日活動を行ってきた。

 市民団体や労働組合は、日韓両国政府間で問題を解決しようと取り組んでも常に妨害してきた。こうした団体が「反日」をビジネスとしていると批判されるゆえんである。

 元徴用工問題についても、韓国政府の解決案などに逆らっているのが弁護士や市民団体グループである。

 21日に大法院(最高裁)は日本企業に賠償を命じる判決を確定させた。日本政府は直ちに遺憾の意を表明、日本企業もこれに従うことはないだろう。韓国政府は政府傘下の財団が賠償金相当額を支払う「第三者弁済方式」で手続きを進めているが、一部原告は、受け取りに応じなかったため、韓国政府は賠償金を裁判所に供託することで事実上解決しようとした。しかし、地裁が供託を認めず、韓国政府は訴訟で争う構えである。だが、尹錫悦大統領の任期満了となる27年までに、判決が確定するかは不透明だ。

 もし、尹錫悦政権後に日本企業の資産を売却する事態になれば、日韓関係は再び悪化する可能性がある。

 こうした市民団体や労組は文在寅政権によって支援され、その活動は一層過激になった。文在寅政権は市民団体に対する補助金などを毎年4000億ウオン(約440億円)程度増やし、現在では年間5兆ウォン(約5500億円)規模に達するといわれる。市民団体や労組はこの金を使って反日活動に参加する人への日当を支払ったり、さまざまな活動費に充てたりしているという。

 韓国の歴代政権は、元慰安婦や元徴用工問題に対する世論の反応を気にして、こうした団体の反日活動を抑え込むことはなかった。それが文在寅政権の後押しで一層過激化していった。

日韓の安定基盤作りに必要な
労組と市民団体の改革

 日韓関係の安定した基盤を作るためには、北朝鮮と組んでまで反日を扇動する組織を無力化する、もしくは、影響力をそぐための改革が不可欠である。特に労組と市民団体による反政府・反日活動には韓国政府も手を焼いており、それに逆らえない状況が長年続いてきた。

 尹錫悦政権は、労組や市民団体の活動に初めて本格的に切り込んだ政権である。労組や市民団体への補助金の使途を精査し、不正を摘発することで、こうした団体の不法活動を取り締まろうとしている。しかし、それに待ったをかけているのが、国会で多数を握る民主党である。