尹錫悦大統領は、政治改革の柱として、まず労組の改革に取り組む姿勢を強調し「労組は労組らしく、事業主は事業主らしくきちんとした市場経済システムを作ること」を重要課題としている。市民団体を取り締まることは、世論の批判を浴びかねることにもなりかねない。だが、市民生活に悪影響を及ぼす労組の活動が対象であれば、世論の抵抗は少ないと判断してのことだろう。

 中央日報は「巨大強硬労組の改革なしに未来はない」と題する社説を掲載し、労組の違法行為を糾弾している。政府は、労組の違法なストを取り締まることは経済活動を健全化するため不可欠と主張している。

 これに反発しているのが、野党の民主党と正義党であり、国会において労組のスト可能範囲を拡大し、ストで損害が生じた企業の損害賠償訴訟を以前より厳格に制限する法案成立を強行した。これに対し、企業と財界は反対し、大統領も拒否権の行使で対抗。与野党の対立が深まっている。

 また、過激労組の民主労総は、韓国社会の中で北朝鮮の主張を代弁している。22年8月13日、韓国民主労総、北朝鮮の朝鮮職業総連盟(職盟)が共同で開催した「8.15全国労働者大会(南北労働者決議大会)」では、米軍撤収や米韓同盟解体などを主張。連帯書と共同決議文を作成、朗読し、従北主義論議を提起した。

 企業家や事業主に対して強硬に不当な要求を繰り返すとともに、韓国社会において北朝鮮の主張を代弁する民主労総の資金源を抑え込むことは、その活動を縮小させ、より健全な労使環境をもたらすであろう。民主労総は、北朝鮮や市民団体とも連携して反日活動を行ってきた。そのため、民主労総の取り締まりは、反日活動を弱めることにもつながる。

市民団体と労組への取り締まりを
強化することで反日運動を沈静化

 市民団体を取り締まることは一方で、「歴史問題に背を向ける政権」との姿勢を印象付け、世論の反発を受ける懸念がある。そのため、より慎重に取り組まざるを得ない。その糸口となるのが、前述した補助金などの不正使用である。尹錫悦政権は、文在寅政権下で市民団体に支給された年間約5兆ウォンの補助金の多くが不透明なため、不適切に支給されていると判断している。

 正義連の尹美香前代表は、団体への補助金や寄付金を私的に流用したことで執行猶予付きではあるが、懲役1年6カ月の判決を受けている。