韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権による対日政策の変化は、日本にとって経済、安全保障など多くの面で重要なチャンスだ。ただ、これですぐに日韓関係の諸問題が、全て解決すると考えるのは早計だろう。安倍晋三政権以降の冷静かつ毅然とした姿勢を堅持し、“最終的かつ不可逆的”な解決を約した日韓請求権協定など過去の国家間合意の順守を韓国に求めるべきだ。その上で、尹政権の取り組みと、それに対する世論の反応を確認し、経済や安全保障面での関係強化を目指すことを念頭に置いた方がよい。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
韓国の対日政策の変化は日本のチャンス
3月に入って、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権はわが国との関係修復を急いでいる。6日、韓国政府は財団が元徴用工問題の賠償を肩代わりすると発表した。尹政権の対日政策の変化は、わが国にとって経済、安全保障など多くの面で重要なチャンスというべきだろう。このチャンスを十分に生かす方策を考えることが必要だ。
ただ、これですぐに日韓関係の諸問題が、全て解決すると考えるのは早計だろう。尹政権の対日政策に関して韓国国内ではマイナスの意見も多い。世論調査の一つによると、賠償肩代わり案への反対は59%、賛成は35%だった。訪日後、尹大統領の支持率は一段と低下した。
今後、韓国国内の反対意見が予想以上に盛り上がり、尹政権が期待するように日韓関係の修復が進まないリスクは依然としてある。ここへ来て、世界経済の先行き懸念も一段と高まっている。韓国の社会心理はさらに不安定化し、経済面を中心に日韓の関係修復に時間がかかる展開もあり得るだろう。
わが国は冷静に、毅然(きぜん)とした立場から、“最終的かつ不可逆的”な解決を約した日韓請求権協定など過去の国家間合意の順守を韓国に求めるべきだ。その上で、関係修復に向けた尹政権の取り組みと、それに対する世論の反応を確認し、経済や安全保障面での関係強化を目指すことを念頭に置いた方がよい。