コンドームに凍りつくお茶の間
紅組の荻野目洋子に続く、12番目の歌手として登場した本木は、全身真っ白の衣装に身を包んでいた。
白組を意識してかというと、どうも違う。首にはコンドームを房のようにぶら下げたネックレスをつけていた。コンドームにはご丁寧に白い液体まで入っている。
紅白はまだ子どもも起きている序盤の時間帯。しかも、この年の関東地区の視聴率は55%で国民の半分以上が見ていた。お茶の間は凍りついた。
しかしジャン・コクトーを愛し、先鋭的芸術に傾倒し、前年91年には篠山紀信の撮影でヘアヌード写真集『white room』も出した本木雅弘である。後年、当時について「メジャーとマイナーの狭間を歩くエッジな存在でありたいみたいな、そんな意識で仕事を選んでいた」と振り返っていただけに、ファッションだけで終わるはずがない。