抗議殺到かと思いきや…

 一夜明けた元日の毎日新聞によれば、NHKに届いた抗議や問い合わせは80件。「コンドームはいかがなものか」「家族全員で見ている番組で不謹慎」といった声が寄せられたというが、視聴率50%を超えた番組でその程度の数だ。

 今ならTwitterで大炎上だろう。伝えるメディアも本木批判に回り、NHK側も謝罪に追い込まれる姿は想像に難くない。

 だが、昭和はそうではなかった。年明けの紅白を取り上げた週刊女性は、本木を「ベストパフォーマンス」だったと称える。本木はのちに、ほぼ日刊イトイ新聞で「もう二度と呼ばれることもないだろうから、変わったことやって帰ろうぜ」と当たって砕けろで紅白に臨んだことを明かしている。

 紅白をお化け番組に育てあげ「紅白の川口」の異名をとった当時のNHK会長、川口幹夫は定例会見で本木のパフォーマンスに触れ「いろんな意見があるだろうが、私自身はエイズ撲滅が目的ならいいと思う。そんな時代なのでは」と容認する発言をした。

 実際、本木は翌93年にはNHKの音楽番組「ポップジャム」の司会に起用されており、お咎めなしだったようだ。少なくとも、表現というものに今よりずっと理解がある時代だったのだろう。