激論!どうなるリニア新幹線#4Photo by Takahiko Hara

リニア中央新幹線の工事着工を認めない川勝平太静岡県知事の強固な反対姿勢が注目されているが、そもそもリニア中央新幹線のメリットとデメリットとは。気になる安全面も含めてジャーナリストの池上彰氏が徹底解説する。(ジャーナリスト 池上 彰 構成/梶原麻衣子)

リニアのメリットと
デメリットが多数ある

 静岡リニア中央新幹線問題は、川勝平太静岡県知事の強固な反対姿勢が注目を集め、地元紙のみならず多くのメディアで取り上げられています。「静岡を通過することを許さない」とばかりにさまざまな論点で反対を述べる川勝知事に対する批判的な論調もある一方で、「そもそもリニア中央新幹線のメリットとデメリットとはどのようなものなのか」を改めて知りたいという声もあるのではないでしょうか。

 そこで、利用者としての立場からリニア中央新幹線をどう考えるべきか、7つの論点から見ていきましょう。

 まずは「所要時間」。現在、東京―名古屋間は新幹線「こだま」であれば約2時間40分、新幹線「のぞみ」であれば所要時間は約1時間40分。これがリニアであれば品川―名古屋間でなんと40分で到着します。しかも想定では、料金は新幹線と比べて700円程度の上乗せだと発表されています。安価な追加料金で所要時間が1時間も短縮されるとなれば、特にビジネス利用者にとっては大きな価値があるといえそうです。

 何より、品川まで40分となれば、名古屋から東京へ毎朝通勤することも可能になります。そうしたリニア後の需要を見込んでか、現在、名古屋駅周辺は大規模な再開発が進んでおり、高層マンションも林立しています。

 さらに東京―新大阪間では現在、最短でも新幹線で2時間30分近くかかるところ、リニアでは67分と見込まれています。1時間半も短縮できるのであれば、使いたいという人も多いはずです。

 日頃、新幹線を利用している方は最近如実に感じられるところではないかと思うのですが、コロナ禍明けの現在、新幹線の指定席予約がかなり取りづらくなっている現状があります。というのも、新幹線はこれまでの観光利用、ビジネス利用に加え、インバウンドによる外国人観光客の利用も爆発的に増えているからです。

 こうした状況を考えれば、リニアは新幹線利用者の溢れた分を受け入れる輸送手段になり得ます。リニアは「輸送量」で見れば間違いなくプラスです。