09「夢」のリニアPhoto:PIXTA

2027年をめどに開業するリニア中央新幹線の駅において、専門家、ジャーナリストによる評価で最も期待が大きかったのが橋本駅付近に設置される神奈川県駅(仮称)だ。しかし、リニア開業で最後に笑うのは、リニア駅を設置しない静岡になりそうだ。特集「駅・空港パワーランキング」(全11回)の#09は、リニア駅、そしてリニア開業後の東海道新幹線駅の期待値を大胆に評価した。(ダイヤモンド編集部 松野友美、臼井真粧美)

品川まで10分で「期待1位」
神奈川県橋本の地価が高騰

 神奈川県相模原市緑区にある橋本駅南口の目の前には、工事の柵に囲まれた県立相原高校の旧校舎がある。ここは今年3月まで、大きなクスノキが目印の緑豊かな農業科と商業科がある専門学科高校だった。周りは大型スーパーと住宅が広がるエリアで緑地や遊歩道などがないため、高校が移転するまでは、敷地が開放され、近隣住民の憩いの場となっていた。

 旧校舎の地下にはリニア中央新幹線が停車する神奈川県駅(仮称)を建設することが決まっている。敷地の開放はすでに中止となり、これから多くの樹木が切り倒されることになる。旧校舎と道路を挟んだ住宅地には、取り壊した一戸建ての土台が残った風景が広がる。

 リニア中央新幹線は品川~名古屋間を40分、さらに延伸した後は品川~大阪間を67分で結び、「夢の超特急」と呼ばれる。今ある東海道新幹線にリニアが加わり、東京から大阪までの輸送の大動脈を二重系化することで、混雑の緩和や災害等のリスク対策が図れ、東海道新幹線を止めて保守点検できるようにもなる。

 2027年ごろにまず品川~名古屋間が開業し、リニアが通る神奈川県、山梨県、長野県、岐阜県の各県に一つずつ、中間駅が設置される。このうち神奈川県駅の設置場所となった橋本は、暮らしの風景が様変わりしていく。と同時に街に対する世の評価も激変、それは端的に地価高騰というかたちで表れた。

 リニア新駅付近の地価を5年前と比べると、神奈川県駅付近の地価がつり上がっている。リニア開業後に駅周辺、ひいては街の価値が上がると期待されているということだ。

橋本駅、神奈川県駅左は橋本駅、右は神奈川県駅が建設される旧相原高校の敷地 Photo by Tomomi Matsuno
クスノキと旧相原高校校舎クスノキと旧相原高校校舎 Photo by T.M.
住宅跡地リニア神奈川県駅建設のために移転した住宅の跡地 Photo by T.M.

 リニア新駅への期待値は駅によって異なり、これは街の期待値にも通じるものだ。そこで、リニア開業前ながら、大胆に「期待駅」「がっかり駅」を予想してみた。

 予想ランキングは、鉄道の専門家、ジャーナリスト5人にアンケートを実施し、「『よく使われる(使い勝手が良い)』と予想する駅」「『結局使えない(使い勝手が悪い)』と予想する駅」についての回答を基にダイヤモンド編集部で順位付けをしたものだ。本アンケートは梅原淳氏(鉄道ジャーナリスト)、枝久保達也氏(鉄道ジャーナリスト)、杉山淳一氏(鉄道ライター)、西上いつき氏(鉄道アナリスト、IY Railroad Consulting代表)、野田隆氏(旅行作家、日本旅行作家協会理事)(順不同)に協力してもらった。