ゴミ屋敷の住人に若い女性が多い社会的要因、「捨てられない」のはあなたのせいじゃないサービススタッフの有山達也さん、「困っている人を助けたい」がモットー 提供:ゴミ屋敷専門パートナーズ

有山達也(以下、有山)  最近の傾向で言うと、もともと男女比が4対6だったのが、今では3対7 となり、女性比率が高まっています。 最近では、形の上で女性の社会進出が進んだことで働く女性の数は増えました。

 しかし、男性中心のビジネス社会に女性が無理やり押し込められているのが現状ではないでしょうか。 出産をして仕事から離れるとキャリアを進めることが難しくなったり、子育ても夫以上の負担を強いられて仕事との両立に頭を抱える人も少なくありません。

 男性はバリバリ仕事をしながら、家庭を持つ機会があるのにも関わらず、バリバリ仕事をしようとすると家庭を持つ機会を逃す可能性もあります。そうした女性にばかり負担がかかる社会の仕組みこそが、ゴミ屋敷で悩む女性を増やしている原因の一つだと考えています。

住人たちは社会に適合しすぎている?

ゴミ屋敷の住人に若い女性が多い社会的要因、「捨てられない」のはあなたのせいじゃない20代女性が住んでいたゴミ屋敷 ※この画像は本文に出てくるゴミ屋敷ではありません 提供:ゴミ屋敷専門パートナーズ

ーー原因が社会における男女の格差にあるなら、問題の根は深そうです。

石田 こうした 根本的な原因を突き止めることなく、 ただ掃除をするだけでは再発する恐れがあります。 なので 私たちは、 依頼主さんに対するヒアリングを行うようにしているのです。

 その際にアドバイスとして、仕事を辞めた方がいいとまでは言わなくても、「自分の優先順位を上げてください」ということは伝えます。「自分を大切にしてください」と声をかけます。 特に今の時代はネットや SNS であらゆるものが可視化される時代ですから、劣等感を抱きやすい環境です。あれもこれもやらなければと頑張りすぎて、自分のことが後回しになる。すると、家が汚くなって 自暴自棄になるという負のスパイラルに陥ってしまうのです。 

ーーそのようなアドバイスをすると、ゴミ屋敷の家主たちは行動を変えるのでしょうか? 

石田 実は、彼らの多くは自分が置かれている現状やそうなってしまった原因を客観的に理解できている人が多くいます。 このような人の場合、私たちのところに相談しに来てくれた段階で問題は解決しています。依頼をいただく段階ですでに、激務や人間関係の悩みを解決して「自分の優先順位を上げられている」ことが多いからです。

 問題は、私たちに依頼を送ろうかどうか迷っている人たち。これまでも、相談の電話をくれるまでに1年間、悩んだという方がいました。自分が置かれている現状を理解していても、「こんな姿を見せるのは恥ずかしくてなかなか相談できない」という真面目な人や「自分のせいで迷惑をかけたくない」という優しい人が少なくないのです。

 そのような人は、例えば話していても普通にコミュニケーションが取れますし、身なりもすごく整っていてとても ゴミ屋敷に暮らしているようには見えません。ただ、これは周りに迷惑をかけてはいけない、 他人の前ではしっかりしなければいけないという感情の裏返しでもあります。真面目な性格が裏目に出て、人に頼ることができない人もいるのです。