ゴミ屋敷の清掃は
依頼人の人生を左右する
ーー実際に清掃した後、 依頼主にどのような変化がありますか?
石田 別人になります(笑)。顔つきや目の輝きが 変わりますね。 お客さんにそれを伝えると「 もっと早く 頼めばよかった」と皆さんおっしゃいます。 その変化は見積もりを頼んだ段階からすでに起こっていて、 今の状況が変わるかもしれないという希望が生まれるからなんですかね。作業 当日に向かって、どんどん顔つきが良くなっていく。 うまく言い表せませんが、お風呂に入った直後の人が爽やかに見えるのと同じような感覚 に近いかもしれません。
ーー清掃が終わった後の部屋を見て、依頼主は最初に何と言うんですか?
山田 「すごい」「綺麗」「床」という3つのキーワードがよく出ますね。「 5年ぶりに床を踏みました」という感想を述べられる方が多いです。
有山 泣き崩れる方もいらっしゃいました。
ーーゴミ屋敷の間取りで一番多いのは?
山田 圧倒的に1Kの一人暮らしが多いですね。
有山 物件として、意外なところで言うと「タワーマンション」の清掃依頼が多いです。タワーマンションの低層階には、単身世帯向けの部屋を用意しているところがあります。こうしたところに住む人とタワーマンションの上層階に住むような人では、感覚が少し違います。濁した言い方をすると、パンチがある方が多いと言いますか……。
ーー依頼人と話すときに気をつけることは?
石田 「今まで大変でしたよね」と共感することから始めるようにしています。依頼者は誰にも相談できずに、一人で苦しんできたからです。その後に、原因や解決を探るコミュニケーションを図っています。「鍋も食器も置いてるし、ずっと自炊されてたんですね。コンビニ弁当になったきっかけは何だったんですか?」と言うと、「仕事が忙しすぎて家に帰ってご飯作る暇もなくて。残業でスーパーも行けないし、結局コンビニになっちゃうんですよ」といった感じです。
有山 この仕事を始めた当初は、家を空っぽにすることが100点だという先入観を抱いていました。家主の満足してくれるポイントは「部屋が綺麗になるかどうか」だけではありません。 不要なものを捨てて、必要なものは残すということが大切だと学びました。そのためには、家主との綿密なコミュニケーションが欠かせません。
例えば、ある腕時計にまったく興味を持たない人もいれば、大金を払ってでも買い求める人がいます。ゴミ屋敷の清掃でも、半年間も賞味期限が切れた食品も清掃員が捨てた方がいいと感じても、家主が必要だというケースで実際にトラブルになったこともありました。
片付けの目的も家主ごとに違ってきます。こちらが答えを教えてあげるのではなく、何を望んでいるのかという答えは家主さんの中にあることがほとんどです。私たちの仕事は、共感に重きを置いたコミュニケーションで、家主の中にある理想を引き出してあげることがすごく重要な仕事だと考えています。