価格が低迷していた上場不動産投資信託(リート)に底打ち感が出てきた。17日にはDAオフィス投資法人のスポンサーが、経営不安説が流れる不動産ファンド会社のダヴィンチ・ホールディングスグループから大和証券グループ本社へと変更されることになり、投資口価格は大幅に上昇。「ようやくリート市場も落ち着いてきた」(大手証券アナリスト)との声が出始めている。
DAオフィスのスポンサー変更が市場に好材料と取られたのは、資金調達の問題があった。昨年3月の短期借入金利は1.37%だったが、今年2月には同2.26%と大幅に悪化。融資の借り換えそのものも難しくなっていた。世界的な金融危機に加えて、スポンサーであるダヴィンチの信用力が大きく低下していたのが原因だ。
一般にリートは、金利が上昇すれば配当が減少し、借り換えができなければ物件をたたき売らざるをえない。またスポンサーの経営が悪化すれば物件調達力が鈍るだけでなく、粗悪な物件を押し付けられる可能性もあるため、投資口価格は低迷することになる。
DAオフィスは純資産倍率が0.39倍と、投資口価格が解散価値を大きく下回る異常な価格だった。「保有物件自体はそれほど悪くないリート」(不動産会社幹部)というからスポンサーが大和証券になったことで、不安はかなり払拭されそうだ。
このほか、破綻したニューシティ・レジデンス投資法人の新スポンサーとしてローンスターが内定。スポンサーが倒産した日本レジデンシャル投資法人、日本コマーシャル投資法人は新スポンサーの選定に入っている。8月には資金難のリートを支援する官民ファンドの創設が計画されており、基金の規模は3000億~5000億円といわれる。9月以降に償還を迎える投資法人債は約6000億円あるが、こうした一連の動きが順回転で回り出せば、償還への不安も徐々に払拭されるだろう。
もちろん依然として、「誰も買い手がつかないほど保有物件が悪いリートもある」(投資ファンド幹部)など、リート自体の倒産はともかく、スポンサー変更や合併を模索する動きが当面続くかもしれない。
だが、それは運営能力のないスポンサーを追い出して、信用力の高いスポンサーを呼び込むことになるだけにリート市場正常化へはプラスと考えるべきだろう。
リートは不動産市場における“最後の買い手”といわれてきた。変動幅が小さい賃料収入を配当に回すため、不動産不況に陥っても安定的な収益物件ならば、買い手として不動産市場を下支えすると見られていたからだ。不動産ミニバブルに翻弄されて信用を失ったリート市場が、ようやく本来の機能を取り戻しつつあるようだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 野口達也)