そんな彼らと良い関係を結ぶために必要なのが、不用意に他者との比較をするような発言をしないこと。その一例が「みんなやってきたから」という言葉です。よく使っているという自覚がある人も多いのではないでしょうか。

 なぜ新入社員は朝早く出社するのか?「みんなやってきたから」。この書類はどうしてつくらなくてはいけないのか?「みんなやってきたから」。

 Z世代の若者からすると、この言葉は、上司や先輩、同僚が当たり前のようにやっていることだから、“あなたも当然やるべきでしょう”というニュアンスに聞こえてしまいます。

 Z世代は目的や意味を重視します。「何のためにそれをやるのか」という目的を伝えないとZ世代は動かないのです。

 新入社員が朝早く出社をするのは、「みんなやってきたから」ではなく、出社してくる人に挨拶をし、より多くの職場の人とコミュニケーションを取るため。

 マネジメント層はそこに本来ある意図をきちんと説明する癖を付けるべき時がやってきたのです。

 次に私が考えるZ世代との関係づくりのポイントは、上下関係です。

 会社という組織の特性上、上下関係があることは致し方ありません。問題はそこで発生する諸々の“面倒なこと”。皆さんも心当たりがあるのではないでしょうか。

 例えば、上座がどこかといった社会常識的なものから、それぞれの企業で受け継がれている独自ルールまで、上下関係があるがために身に付けなければならないさまざまなことをまず学ぶことが、社会人の第一歩であったという人も多いでしょう。

 しかし、Z世代の若者たちは、これまでの人生でストイックな上下関係のある場所に所属した経験がない場合がほとんどです。社会人になったからと言って、突然厳しい上下関係に慣れ、かつうまく振る舞うことを求めるのはあまりにも酷なことだと思いませんか。

 そこで私はまず、マネジメント層からZ世代への指導・教育は、相手の目を見て、元気な挨拶と返事をできるようにすることからスタートするようお薦めしています。これなら上下関係に不慣れな若者にも今すぐできますし、上の立場の人から見た場合も、“無礼”になることはありません。

 誰に会った時でも元気に挨拶をする、何か言われた際は元気に返事をするなんて、小学生じゃあるまいし……なんて思った人もいるかもしれませんが、ある意味では、そんなところからZ世代の指導・教育は必要だということ。

 教え育てることは、小さな物事の積み重ねなのです。