海賊キッドの沈没船を発見――。
先週、CNNやBBCでも流されたこのニュースは、瞬時に世界中を駆け巡った。
17世紀末、海賊キッドこと英国人のウィリアム・キッドは、商船などを略奪していた実在の海賊である。元来は、略奪者を取り締まる側の船長だったが、スポンサーである英国貴族らの期待を裏切って海賊となる。
最期には捕えられるキッドだが、奪ったはずの財宝の行方はいまだに不明だ。それが、さまざまな伝説を生むことになった。
キッドは、スチーブンソンの『宝島』やエドガー・アラン・ポーの『黄金虫』のモデルにもなり、世界のどこかに略奪した財宝を埋めたという伝説が常について回っている。キッドが立ち寄ったとされる場所では、いまだに財宝探しが行われている。
その海賊キッドの沈没船の残骸が、カリブ海のドミニカ共和国の沖合水深3メートルの所でみつかったことで、新たに人々の夢を呼び覚ました。
古今東西、いつの世でも「宝探し」は人々を夢中にさせる。日本も例外ではない。埋蔵金伝説に魅せられた人物は数知れず、日本各地でさまざまな噂が飛び交っている。
90年代初め、TBSは、コピーライターの糸井重里氏が江戸時代に隠されたという「徳川埋蔵金」を探すという趣旨の番組を放映し続けていた。確か、シリーズの最後には、数台の重機を使って、赤城山麓を掘り起こしていたように記憶している。いったいどれほどの制作費がかかったのだろう。見当もつかないし、壮大な無駄、あるいは愚挙といえるかもしれない。
だが、この番組が鮮烈に記憶に残っているのはなぜだろう。それはこの種の伝説が、大の大人たちを魅了させる何かを秘めているからではないか。だからこそ、いまだに「山下財宝」やM資金などの噂は絶えず、スチーブンソンやポーも読まれ続けているのだろう。
埋蔵金の発見者は民主党か、中川議員か
この秋、日本では新たな「埋蔵金伝説」が誕生している。場所は霞が関。その存在については、すでに肯定派と否定派の間で論争にさえなっている。
とはいえ、今回の「埋蔵金」は土の中に埋まっているような類のものではない。また、財宝のありかについても、知悉している人物が少なくないという変わり種だ。