自民党の各派閥の政治資金パーティーを使った「裏金疑惑」は年明けの2024年1月7日、最大派閥安倍派(清和政策研究会)の現職国会議員の逮捕にまで発展した。今後の捜査の核心は、派閥の組織的な裏金づくりを派閥の領袖(りょうしゅう)や事務総長らがどこまで関与していたかだ。安倍派幹部の立件は困難との見方もあるが、捜査や政治改革を中途半端に終わらせれば、国民の不信は一段と強まり岸田政権は存続が危うくなる事態にもなりかねない。捜査の引き金になったのは在野の学者の刑事告発だった。「政治とカネ」の問題でこれまで100件余りの刑事告発を続けてきた上脇博之神戸学院大学教授に、告発の経緯や問題意識とともに抜本解決の在り方を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部特任編集委員 西井泰之)
「池田議員逮捕」で終わらせるな
徹底捜査すべきは派閥領袖らの関与
――池田佳隆衆院議員が安倍派から裏金としてキックバック(還流)を受けたパーティーの売上金計4826万円を政治資金収支報告書に記載しなかったとして政策秘書と共に逮捕されました。裏金疑惑で現職国会議員の逮捕は初めてです。どう受け止めていますか。
政治資金問題の立件は、往々にして形式犯で済ませ、政治資金収支報告書を書いた会計責任者の起訴だけで済ませることがあります。今回も当初、派閥側がパーティー収入の総売り上げは間違っておらず、明細を書かなかっただけだと形式犯で逃げようとすることは懸念していました。
しかし、裏金づくりが明らかになり、現職国会議員の逮捕にまで至ったことは、検察も告発を真剣に受け止めてくれたからだと思います。とはいえ、特捜部は証拠隠滅の恐れがあったから逮捕したと説明しているようです。
ぜひとも徹底的に捜査を尽くして裏金をつくった側も受け取った側も政治家全員を立件してほしい。今回の問題は組織的だし悪質だからです。裏金づくりは、会計責任者だけでとても決められるとは考えられません。
当然、パーティー収入を裏金化することを決めたり指示をしたりした政治家、例えば派閥の領袖や事務総長も会計責任者との共犯に問えると思います。東京地検特捜部が派閥の事務総長経験者らの関与を立証できるだけの証拠を家宅捜索や任意の事情聴取でどこまで得ているのかが気になります。
自民党の裏金問題で、派閥領袖や事務総長などの関与を徹底捜査すべきと訴える上脇教授。次ページでは、裏金問題を告発した経緯や、「政治とカネ」の問題の解決法について語ってもらった。