交錯する「安倍派解体」の思惑、首相が模索する新たな連携とは2023年12月19日午後、「清和政策研究会」(安倍派)事務所の家宅捜索を終えて、事務所の入るビルを出る東京地検特捜部の車両 Photo:JIJI

 自民党は異常事態に突入したまま越年した。しかし、年が改まったからといって展望が開けるわけではない。むしろ混迷、混乱が加速する可能性の方がはるかに高い。

 2023年12月19日午前10時過ぎ、東京・平河町の自民党安倍派と二階派の事務所が同時に東京地検特捜部の家宅捜索を受けた。容疑は自民党派閥が主催した政治資金パーティーを巡る政治資金規正法違反。両派ともパーティー券の販売で得た収入の政治資金収支報告書への多額の不記載があり、収入の還流と裏金化も指摘される。

 不記載の額は安倍派が5年間で約5億円、二階派は約1億円とみられている。ただ両派に関するメディア報道は大きな差があった。安倍派は岸田政権の中枢を担ってきた前自民党政調会長の萩生田光一、参院自民党の前幹事長、世耕弘成ら「5人衆」の全員が還流に関わったと実名で報じられた。

 対して二階派については今のところ実名で報じられた幹部はゼロ。この差に関して非主流派の閣僚経験者はこんな解説をする。

「安倍派は還流を現金の手渡しで行った。これが決定的な違いだ」

 安倍派の疑惑が報じられた当初、首相の岸田文雄は「報道だけで人事に手を付けることはしない」と周辺に語っていたが、その後一気に人事を断行した。岸田がパーティー券の販売リストなど確たる証拠を手にしたとみるのが自然だろう。ただし政権中枢からの安倍派一掃には、岸田の別の思惑もにじみ出る。「安倍派解体」だ。