自分よりもはるかに年下の、未熟な人間の性を踏みにじる小児性加害者たち。真っ当な人間では踏み出せない一線を軽々と超えてしまう彼らには、異常な「認知の歪み」があるという。彼らの治療・更生に携わる専門家が聞き取った、戦慄すべき自己正当化の言葉とは。※本稿は、『子どもへの性加害 性的グルーミングとは何か』(幻冬舎新書)の一部を抜粋・編集したものです。
子どもと向き合ったときに
小児性犯罪者が見ている景色
「認知の歪み」をひと言で言えば、「嗜癖行動を継続するための、本人にとって都合のいい認知の枠組み」ということができます。「自分を正当化するための都合のいい言い訳=自己正当化理論」とイメージしてもらえたら理解しやすいかもしれません。
小児性犯罪者の現実の捉え方には大きな思考の偏りがあります。「僕とこの子(被害者)は、純愛で結ばれているからセックスをするのは当たり前だ」というのも一例です。
また性加害をした際、恐怖のあまり体が硬直してしまった子どもを前に「この子は緊張して、目を潤ませて喜んでくれている」などと、通常では到底考えられない認知の枠組みを彼らは内包しているのです。
この認知の歪みにはいくつかバリエーションがあります。
(1)被害者への責任転嫁
「大人とセックスしたがる子どももいる」
「子どものほうから誘惑してきたから、自分はそれに応じただけ」
「暗い夜道をひとりで歩いているのは、触ってほしいサインなんだ」。
そもそも性的な知識や経験のない子どもが大人を誘うというのは無理筋です。また加害者は自分の行為を棚に上げて、「被害にあったのは被害者が悪い」と意図的に相手の落ち度にします。加害行為の後に自分から金銭を手渡しておきながら、「彼らもビジネスだった」などと自己を正当化して責任逃れをするのも、このバリエーションです。
また、これは小児性犯罪者だけでなく痴漢や盗撮、レイプなどその他の性加害でも見受けられるものです。「短いスカートをはいていたから盗撮されても仕方ない」「夜道をひとりで歩いてたから、ちょっとぐらい触ってもいいだろう」などというものです。
加害者の頭の中では、それらが「性加害をしていい理由」に変換され、正当化されてしまうのです。
(2)無知の利用
「口止めさえしておけば、素直な子はいたずらをし続けても秘密にしてくれる」
「小学校低学年なら何をされているかわからないからいまのうちに触っておこう」
「何をされているかわかっていない、その表情が無性にかわいいんだ」。
グルーミングの末、性的な接触をされても「何をされているかわからない」という子どもの知識や経験のなさを逆手に取るものです。
過去に私が担当した3歳の女児に加害行為をした元保育士の男性は、逮捕された後、警察署での面会で「3歳だと記憶に残らないじゃないですか。それってWin-Winですよね」と口にしました。