広げる空間は縦か?横か?
床材の節目までこだわるメーカーも

 業界トップの提案力があるのは、積水ハウスだ。社内2900人以上いる一級建築士のうち、上位8%を優秀な設計士「チーフアーキテクト」として認定する制度がある。間取りの提案力やデザイン力のレベルを上げやすい土壌が強みとなっている。

 木の雰囲気、ストーリー、質感、外構提案までこだわりたい人なら、住友林業が選択肢の筆頭だ。とくに外構提案は、国内トップだろう。「ウチソトをつなぐ」「風の流れを感じる」という発想は積水ハウスと近いが、住友林業は床材の加工技術が高く、足ざわりや風合い、節目の位置までこだわっている。

 両社とも「横に空間を抜いてウチソトにつながりを持たせる」文化があり、間取りにもそれが反映されている。
 
 空間を縦にも広げて、部屋の広さを演出しているのが大和ハウス工業だ。標準の天井高が2メートル72センチとなり、業界内でもかなり高いほうだ。

 三井ホームは「立米設計」で、2階のリビングや斜め天井、上空間にスキップフロアをつくるのが特徴だ。

 ミサワホームは、1.5階や2.5階など、階層間に中空層を持たせる縦空間設計のパイオニアメーカーだ。とくに狭い土地では上空間が強みになるので、同社のアドバンテージが出てくる。

 ヘーベルハウスは、高い建物が隣にあって日影ができそうな土地で強みを生かす。「アリオス」という住環境シミュレーションシステムがあり、プランニング段階で隣の家の位置から日照・日射・通風・採光などを計算できるからだ。

断熱性能よりも
メンテナンスに注目しよう

 ハイブランド系を買うような層の人が、光熱費の削減にそこまでこだわるかというと、必ずしもそうではないだろう。

 もちろん、大和ハウス工業ならウルトラ断熱仕様という断熱性能が高い仕様を用意したり、三井ホームなら14センチメートルの断熱材が入っていたりするといった特徴はあるが、ハイブランド系ハウスメーカーに高い断熱性能を求めるのは少しナンセンスだ。なぜなら、そこが各社の勝負どころではないからだ。

 ハイブランド系は、軒先を伸ばして夏の日射を防いだり、風の流れを計算したりする。住友林業なら春夏秋冬の日照がどの部屋でどうなるのかをシミュレーションしながら、図面を打ち合わせる。つまり、日射・風など自然のエネルギーを活用しながら快適性を追求しているのだ。そのため、単純な断熱性能でハイブランド系ハウスメーカーを比較する必要はない。

 メンテナンスの手間と費用についてはどうか。

「当社の家はずっと変わらない美しさがあるから、メンテナンスは必要ない」と考えているハウスメーカーもあれば、「手入れをすることによって思い出を刻んでいく」といった“経年美化”“経年優化”という考え方のハウスメーカーもある。ハイブランド系は後者が多く、アフターメンテナンスがとても手厚い。