年金の不足分を埋めるための
「確実性の高い投資」
(妻)確実性の高い投資、ですか?
はい、そうです。逆に私は確実性の高いものしかお勧めしないです。まずは先ほど算出した不足分の月8万円を目安に考えます。資産運用で月8万円以上が入れば理想的ですが、無理をしなくても、3~5万円ほどのプラスを出せればいいと考えましょう。月3万円としても、年額では36万円になります。30年では1080万円です。先ほど、30年間の不足額を2880万円と算出しましたが、これから1080万円を差し引くと不足額は1800万円となります。元々の手持ちのお金が3000万円ですから、残りは1200万円ですね。つまり95歳の時点でも手元に1000万円以上が残る計算となります。
(夫)気持ちの上ですごくラクになりますね。ちょっとくらい長生きしても大丈夫かも(笑)。
今度は月3万円の利益を出すために、どのぐらいの投資をすればいいかを考えます。それはもちろん何に投資するかによって変わってきます。鴨下さまの場合、資金が3000万円ありますが、これを全部投資する必要は全然なくて、たとえば半分は現金で持っておいて、残りの半分を投資に回すとか、あるいは、「つみたて投資枠」で少しずつ積み立てるとかそんなイメージでいいと思います。あるいは向こう10年間の不足分程度を手持ちとして確保しておいて、残ったお金を運用に回すという考え方もいいと思います
(夫)ほー、今まで私たちがイメージしていた投資とはまったく違うような……。
はい。60歳以降は、資産の「量」よりも、毎月いくら入ってくるかという「流れるお金の量(キャッシュフロー)」を大切に考えることが必要だと思います。たとえば今お二人が60歳で、70歳までの10年間で少しずつNISAを積み立てていけば、さすがに倍は難しいと思いますが、元金よりはまず増えるだろうと考えられます。そうしたら先ほど述べたインフレに対する対応力も十分つくわけです。そうやって10年スパンで上手に運用して増やしていけば、70歳、80歳になったときにどんどんラクになっていくはずです。
(夫)それはありがたいです!
そこで私から提案するのは大きく2つの柱があって、1つ目はNISA、2つ目は不動産投資です。そしてこれらを補完する意味で保険の見直し、ポイ活なども併せて行っていけば、手堅くしっかりした資産形成ができていくと思います。
(夫)正直、これからはお金が減る一方だと思っていました。「資産を増やす」なんて考えていませんでした。
資産運用の目的は「収入+金融資産の取り崩し+運用益>支出」という状態に持っていくことです。これが達成できれば安心して老後を迎えることができます。
(妻)いいですね! 明るい老後が見えてきた気がします!
もうひとつ、別の観点からのお話なのですが、退職金でまとまったお金が入った方に対して、金融機関からいろいろ金融商品を勧められることがあります。「資産をさらに増やしませんか?」みたいな感じで……。もちろん金融機関の方も悪意を持って近づいてくるわけではないけれど、そこで資産運用の経験がなくて知識がないと、商品を見きわめることができなくなったりします。その結果、「もっともいい選択」ができなくなるという可能性もあるわけです。
(夫)なるほど……。それならば「投資をする・しない」は置いておいたとしても、知識をもっておくことは大事ですね。