24卒(2023年度卒業・修了予定者)の入社内定式が行われた、昨年(2023年)10月1日時点で、大学生の就職内定率は74.8%と、前年同期を0.7ポイント上回った(*1)。コロナ禍が落ち着き、労働力人口の減少に伴って、新卒採用は「売り手市場」になっている。しかし、応募学生の母集団形成がうまくいかず、良い人材になかなかめぐり逢えない企業も多い。そうしたなか、25卒採用に向けて、『志望度は面談で決まる~学生に選ばれる企業になるために~』というウェビナーが昨年(2023年)11月と12月に開催された。そのウェビナーの内容とともに、最新の“採用市場戦線”を「HRオンライン」が追いかける。(ダイヤモンド社 人材開発編集部)
*1 厚生労働省「令和5年度大学等卒業予定者の就職内定状況調査(令和5年10月1日現在)」より
企業の採用担当者が高い関心を寄せたウェビナー
現在(2024年1月末)、企業は25卒(2024年度卒業・修了予定者)の採用活動を進めている。すでに内々定を出している企業、内々定を出し終えた企業、インターンシップを行っている企業……と、それぞれの採用スケジュールに沿って、各社のフェーズはさまざまだ。
政府関係省庁(内閣官房・文部科学省・厚生労働省・経済産業省)が、経済・業界団体に“要請(*2)”している就職・採用活動の日程は、(1)広報活動開始=卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降、(2)採用選考活動開始=卒業・修了年度の6月1日以降、(3)正式な内定日=卒業・修了年度の10月1日以降、となっている。「広報活動」は、採用を目的とした、業界情報・企業情報・新卒求人情報などの発信、「採用選考活動」は、一定基準による学生の選抜を目的とした行いを指すが(*3)、こうした定義や日程が形骸化していることは周知の事実だ。“要請”のとおりなら、面接開始は6月1日なのに、ダイヤモンド・ヒューマンリソース社が24卒を対象にした調査では、卒業・修了年度に入る直前(学部生なら大学3年)の3月以前に面接を受けた学生が75%以上、卒業・修了年度(学部生なら大学4年)の5月までに面接を受けた企業数は受験した企業数全体の半数以上という結果になっている(*4)。冒頭に記したように、すでに内々定を出している企業もあり、25卒の採用活動は、「今が旬」といえる。
*2 2024(令和6)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動について 「2024(令和6)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請先(1252団体)」より
*3 「2024(令和6)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請等について」より
*4 株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソース 「2024卒 採用・就職活動の総括」参照 (総括データのダウンロードは、社名・名前などの登録が必要)
そうした状況のなか、昨年(2023年)11月に、企業の採用担当者が高い関心を寄せたウェビナー(無料)が行われ、その反響を受けて、同じ内容のウェビナーが翌月(12月)にも開催された(*5)。
*5 2023年11月のウェビナーは告知期間が短かったにもかかわらず、想定以上の企業が参加した(開催社コメント)。11月と12月の内容は同じものだが、オンデマンドではなく、それぞれが生配信された。
ウェビナーのタイトルは、『志望度は面談で決まる~学生に選ばれる企業になるために~』。“採用、インターンシップ選考面談のブラッシュアップを希望されている方”“適切な面談方法にお困りな方”向けと告知され、11月同様、想定していた参加希望人数を大きく上回ったという。時間はわずか60分、ナビゲーター(話者)は、多業種のインターンシップのプロデュースなど、人材採用から育成までのコンサルティングを手がけている福重敦士さん(株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソース HD営業局・局長)。就職戦線を伝える一メディアとして、「HRオンライン」も視聴した。
平日の午後4時、定刻どおりに福重さんが画面に登場すると、早速、最初のパートである「採用戦線総括から考える今後の予測」がスタートした。過去15年間の「エントリー数・内定者数」の数値一覧(*6)が映し出され、直近の「採用戦線総括」として、24卒が「(企業への)少ないエントリーで、(企業から)たくさんの内定」を得たことを福重さんが明言した。昨年(2023年)のちょうど今頃――冬のインターンシップを終えた後に内々定が出たケースもあり、1月や2月には「内定(内々定)を持っています」という学生の声が耳に届いてきたという。
*6 株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソース調べ(一部を除く)
福重さんの淀みないトークに合わせて、投影資料がテンポよく切り替わっていく。
企業の内々定出しが「短期集中型」から「長期分散型」に移行している状況を福重さんはデータをもとに説明し、学生が就活をなかなか終えないことをウェビナー参加者に伝えた。もちろん、就職先を早々に決める学生や採用活動を短いスケジュールで終える企業もあるが、たいていの場合、就職活動・採用活動は大学3年生の5月頃から始まり、大学4年生の夏頃まで続く。この“早期開始の長期化”は、企業と学生にとって、負担が大きいことは間違いない。採用コンサルタントの谷出正直さんは「内定を得る前も内定を得てからも、自分の進路や就職先が決められないという悩み相談が増えた」と語り(*7)、23卒や24卒は、コロナの影響で、業界の動きを知る機会や学内での教職員や友達との会話が減ってしまったこともその一因だと分析する。結果、“早期開始の長期化”で学生が複数の内定(内々定)を持つようになり、入社辞退者が増えるという現実に企業が直面している。
*7 HRオンライン「24卒生の“秋採用”で、企業が良い学生と巡り合うためのいくつかの方法」より
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福重敦士さんインタビュー 「HRオンライン」2023年6月29日配信
採用担当者が絶対に知っておきたい、就活生への“フィードバック”の重要性
福重 昨今の学生の意識や動向をよく知る企業は、「採用活動における主役は学生である」というふうに意識を切り替え、インターンシップ等においても参加者に対して丁寧なフィードバックを行(おこな)っています。