新卒採用支援を行っているダイヤモンド・ヒューマンリソース社の調査によれば、今年(2023年)のゴールデンウイーク明けの時点で、企業の内定を獲得した学生(24卒生)の比率は昨年(23卒生)を大きく上回った。しかし一方で、夏を過ぎ、秋になって、まだ内定を受けていない学生、採用枠を満たしていない企業も多くある。そうしたなか、10月から12月にかけて行われる「秋採用」は、企業にとっても、学生にとっても、お互いの活路を見出す大きなチャンスになるだろう。採用コンサルタント・採用アナリストの谷出正直さんに、企業(採用担当者)と学生(就活生)の良い出会い方を「HRオンライン」が聞いた。(ダイヤモンド社 人材開発編集部、撮影/菅沢健治)
コロナ禍での企業の採用活動と学生の就職活動
2023年・秋――マスク姿の人が減り、ウィズ・コロナの様相も変化しているが、2020年初頭からの新型コロナウイルス感染症の拡大は、企業の採用活動・学生の就職活動に大きな影響を与えた。
谷出 皆さんご存じのとおり、コロナの影響をまともに受けた21卒生・22卒生は、会社説明会や面接といった就活はオンラインが中心になりました。私自身も、大学の教室で行っていた講義などがリアル(対面)ではなくなり、学生とのやりとりはオンラインがメインに。オンラインは良い点もありますが、デメリットは、コミュニケーションがとりにくく、お互いの理解が思うように進まないこと。企業には、「内定を出しても、学生がなかなか承諾してくれない」というケースが増えました。内定の出た企業を訪問したことがない学生は、自分を納得させる十分な情報がなく、承諾に踏み切れない傾向があります。この春に卒業した23卒生から、ようやくコロナ前の状況に戻ってきましたが、長く続くコロナ禍で、企業も学生もさまざまな悩みを抱えました。
谷出正直 Masanao TANIDE
採用コンサルタント/採用アナリスト
奈良県出身。筑波大学大学院体育研究科を修了。新卒でエン・ジャパンに入社。新卒採用支援事業に約11年間携わり、独立。現在は、企業や大学、学生、採用支援会社、メディアなど新卒採用や就職活動に関わる一方、約3100名と活きたネットワークを構築。企業の採用支援、企業や大学、学生に向けた各種セミナーや講演、研修などを行う。NHK、日本経済新聞など各種メディアに年間100本以上のコメントやインタビューが掲載される。NHK「クローズアップ現代+」に出演。筑波大学同窓会「一般社団法人 茗渓会」理事。
コロナ禍で、谷出さんは、就活生から、「就職先の企業はどうやって決めたらいいですか?」という相談を多く受けるようになったという。
谷出 「どの業界がいいですか? どの企業がいいですか?」と、内定を得る前も内定を得てからも、自分の進路や就職先が決められないという悩み相談が増えました。コロナの影響で、業界の細かな動きを知る機会や学内での友達との会話が減ってしまったことが原因でしょう。コロナ禍前は、「先輩はどんな就活をしましたか?」「就活はいまどんな状況?」と、ゼミやアルバイト先で気軽に先輩や同級生に尋ねることができたのに、それができなくなってしまった。サークルに入れない、対面の授業もない、同級生にも会えないし、就活の参考になる社会人との出会いもない。誰に相談していいか分からずに、SNSで就活アカ(就活用のアカウント)を作って情報を取ってみたものの、「A社のエントリーシートが通った」「B社の社員座談会に呼ばれた」「友達の友達はもう内定もらったらしい」……と大量の情報が流れてきて、見知らぬ人の発信に焦りを感じ、気持ちが凹んでしまう学生も多いです。