25卒の「インターンシップのルール変更」について

 採用マーケットの変化を説明しながら、福重さんは、1992年に約200万人だった18歳人口が、2040年には約77万人まで減少する可能性を明らかにした。近視眼的になりがちな企業の採用活動だが、学生の数が減っていく未来図は頭に入れておく必要があり、ウェビナーに参加している採用担当者に、“福重メッセージ”がどんどん刻まれていく。

 次に、全国の企業と学生(24卒)を対象にした調査結果(*8)が披露され、インターンシップ類を導入・実施した企業(従業員501名以上)が約9割を占め、「オンラインよりも対面での面接が良かった」と回答した学生が23卒よりも増えたことが具体的な数字で知らされた。なかでも興味深かったのは、約半数の企業(従業員501名以上)が、「インターンシップのルール変更」に合わせるかたちで、採用選考を行う予定であることだ。

*8 株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソース 「2024卒 採用・就職活動の総括」より(総括データのダウンロードは、社名・名前などの登録が必要)

 ここで、「インターンシップのルール変更」について、おさらいしておこう。

 国公私立大学と経団連(一般社団法人 日本経済団体連合会)の代表者によって構成された「採用と大学教育の未来に関する産学協議会(以下、産学協議会)」が、2022年4月に、報告書『産学協働による自律的なキャリア形成の推進』を公表し、新卒採用における企業のインターンシップのあり方が見直された。そうして、従来、「インターンシップ」と呼ばれていたものが、25卒から4類型に整理された。

 産学協議会は、学生向けのインフォメーション「何が変わるの? これからのインターンシップ」で、「学生が職場で業務を実際に体験し、仕事の楽しさや厳しさ・難しさなどを認識することで、自らの能力を見極めるきっかけ作りとなる『質の高いインターンシップ』の普及が必要」と説く。また、企業に向けて、「質の高いインターンシップを普及する観点から、タイプ3のインターンシップの実践にご協力ください」と提言し、「タイプ3/汎用的能力・専門活用型インターンシップ」に必要な要項を、5日間以上のプログラムの実施と参加学生へのフィードバック(*9)としている。

*9 「タイプ3/汎用的能力・専門活用型インターンシップ」の指導要件(必須)は、「就業体験では、職場の社員が学生を指導し、インターンシップ終了後、学生に対しフィードバックを行う」としている。

 一方で、産学協議会は、フィードバックの形態を規定していない。「インターンシップ終了後(終了時を含む)に、職場で指導した社員から参加学生に対して、定性的なアドバイス(良かった点、改善点など)を行うイメージ」と明示するのみ(*10)――つまり、学生へのフィードバックの方法は各企業の裁量なのだ。

*10 採用と大学教育の未来に関する産学協議会「よくあるご質問(FAQ)-産学協働による学生のキャリア形成支援活動(4類型)の実践-」より(2023年7月)

 毎年、ビジネス誌『週刊ダイヤモンド』で「新卒就活戦線総括」を執筆している高村太朗さん(株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソース 経営企画室・室長)は、タイプ3のインターンシップを実施する企業は大手に限られ、大手企業にしても、指導要件をクリアするハードルは高く、相応の人員と時間を投入する必要があると見通している(*11)。つまり、「インターンシップのルール変更に合わせたかたちで採用選考を行う」と答えている企業は、インターンシップのプログラム作成や学生へのフィードバックに相応の苦労があると推察できる。

*11 HRオンライン「23卒の就職活動の総括から見えてきた“24卒採用”の重要ポイント」より

新卒採用の成否は、学生への“フィードバック”の良し悪しで決まる!

併せて読みたい!
福重敦士さんインタビュー 「HRオンライン」2023年2月9日配信

25卒採用“インターンシップ改革”で、人事担当者が知っておきたいこと

福重 25卒生の採用においては、企業は、夏にタイプ1の「オープン・カンパニー」で多くの学生に対してPRを行い、年末から翌年にかけてタイプ3のインターンシップで採用したい学生の囲い込みを行うというのが現実的な動きになるのではないかとみています。