採用面接は、企業が応募者の志望度を高める場
インターンシップの状況をウェビナー参加者が理解したうえで、福重さんの解説は「採用成功のポイント」に移り、(1)学生が企業を「選べる」状態になっていること、(2)学生がコミュニケーションの「質」で企業の良し悪しを判断している傾向を伝えた。そして、インターンシップのフィードバックや採用面接時には、インターンシップ参加者や採用応募者の「強み」を確認する質問が有効的だと断言した。
かつて、「HRオンライン」のインタビュー(*12)で、福重さんは次のように語っている。
「採用面接においては、自社のことを話すことも重要ですが、学生の話を聞き出すことが大切です。就活に臨む学生の関心事に寄り添い、ひとつでもその琴線にひっかかる会話ができ、そこから自社で働くことを『自分ごと化』してもらうことが重要なのです」
*12 HRオンライン「23卒採用の選考で、経営者や人事担当者がハマりがちな落とし穴」より
コロナ禍でオンラインでの面接がすっかり定着したが、前述したとおり、24卒を対象とした調査では、「オンラインよりも対面での面接が良かった」という回答が23卒よりも増えている。モニター越しではない“リアルな空間”において、面接官は、相手(採用応募者)の表情や仕草の変化に留意しながら傾聴することがいっそう大切になるだろう。
投影資料とともに、福重さんは、「面接の主役はあくまでも応募者であり、面接は企業が応募者の志望度を高める場である」とメッセージし、ウェビナーの核心へと近づいていった。労働力人口が減っていく時代、企業は学生に「選ばれる」対象であり、応募者の「強み」を自社にマッチングさせることがポイントだと語る。
雇用される側(学生)が雇用する側(企業)を選ぶ――この言葉にピンとこない人もいるだろうが、学生が複数の内々定から企業を選ぶ以前に、そもそも、応募の段階で学生は企業を選んでいる。
「リレーション採用」を提唱する作馬誠大さん(株式会社インタツアー・代表取締役社長)は、「最終的には企業側が学生を選ぶのですが、その前提として、“自社の求める人材”に『選んでもらう』というステップがあります。企業側が『選ぶ』のはその後です。『選ぶ』前に『選ばれる』こと――そのために、何をするのかを考えなければいけません」と語る(*13)。
*13 HRオンライン「学生と企業の“長期的なつながり”となる『リレーション採用』の価値」より
面接の手法や面接官の姿勢は企業によりけりだが、上から目線の対応や、圧迫めいた面接は学生の心証を悪くするだけで、優秀な人材の取りこぼしにつながっていく。面接を受けた者が面接官への不快感をSNSで広げれば、それが企業のイメージとなって、就活生たちの先入観をかたちづくる。
また、産学協議会が、インターンシップのフィードバックの担い手を「採用担当者」ではなく、「職場で指導した社員」にしていることを忘れてはならない。人事部が就活生にどんなに丁寧に接しても、現場の先輩社員が不適切なフィードバックを行えば、学生の志望度は低くなってしまうのだ。