学生の成長につながるフィードバックを行うこと
では、インターンシップのフィードバックや採用面接の場で、学生の志望度を高めるにはどうすればよいのだろうか? その方法として、福重さんは3つの方法を示唆した。
(1)学生の話をよく聴くこと――「聞く」ではなく、「聴く」。面接では、できるだけ、採用応募者の話す時間を増やすことが重要。
(2)学生の成長につながるフィードバックを行うこと――ここでの「フィードバック」は「対話」という言葉に置き換えてもよいだろう。インターンシップの参加者や採用応募者の「強み」に着目するのがポイントだと、福重さんは補足する。
(3)採用応募者と入社後の“活躍イメージ”を共有すること――これは、自社とのマッチングを知るためだ。共有がなければ、企業側が「マッチする」と思っても、学生は「マッチしない」と思うかもしれない。言葉にして伝え合うことが肝要だ。
ウェビナーの終盤で、福重さんは自らが開発に携わった「フィードバックシステム(*14)」の説明を行い、学生に寄り添うことの大切さをあますことなく伝えていった。「フィードバック」を「対話」という言葉に置き換えるなら、「フィードバック」は、インターンシップ後にだけ行うものではなく、インターンシップの前・中・後、そして、採用面接の場、さらに、内々定を出した後など、その機会は何度もある。内定辞退を減らすためにも学生への「フィードバック」は重要だろう。
*14 DFS(Diamond Feedback System)=インターンシップ終了後などにおける、企業から学生へのフィードバックを支援するシステム。
具体的な事例をもとに、聞き取りやすく、分かりやすい解説を続ける福重さんのトークの中で、特に印象深かったのは、「そんなに面倒なフィードバックをしなければ、学生を取れないのか……」と嘆く採用担当者を想定しての答えだ。
「『面倒だから』と言って、やらない企業は、面倒なことをしっかり行っている企業に良い学生を奪われていきます」(福重さん)
はたして、どのような企業が、適切なフィードバックを行い、今回のウェビナーが提案するような「採用選考活動」を成し得ているのか――ウェビナー終了後に、福重さんに尋ねた。
「実際のところ、『短期集中型内々定』時代のやり方を続けている企業が多いです。しかし、時流に合わせて、面談や採用面接の場で応募者の志望度を高められている企業はあります。そうした企業に共通しているのは、『選考してやる』といった、学生を見下した意識がなく、面談や面接の場の“良い雰囲気作り”を行っていること。学生が話しやすい質問を常に投げかけています」(福重さん)
書籍『内定メンタル』の著者である光城悠人さんは、採用担当者が学生の「良い理解者」になることで、学生たちの企業への向き合い方が変わる(*15)と説く。
*15 HRオンライン「『就活病』の学生のメンタルを、先輩社員や採用担当者がフォローする方法」より
たとえ、自社の理念や採用基準に合わない学生に対しても、採用担当者や先輩社員は、インターンシップ後のフィードバックや採用面接での対話を通して、日本の社会全体や他業界、極端に言えば、競合他社のためにも、学生にしっかり向き合い、社会に出ることへの期待感を学生に高めてもらうことが必要ではないか――福重さんのウェビナーはそんなことを思わせてくれた。