グーグルなどへの「市場国」による課税
2年遅れでようやく実現するか?
税は国家なり、ともいうが、法の執行は国境を越えられない。
間隙をついて多国籍企業や富裕層は国境を越えて自由にふるまい、低い税率で資金や帳簿上の利益を呼び込むタックスヘイブンなど、各国制度の隙間を利用して税逃れを行ってきた。
それに対応するため、各国は法人税引き下げ競争に巻き込まれてきた。富裕層に対しても、格差の拡大につながるおそれがあっても金融所得は軽課税してきた。企業が海外に出ていったり、富裕層が反発し株価が下落したりすることをおそれたからだ。
だが、2024年には、経済協力開発機構(OECD)などが長年取り組んできた多国籍企業の税逃れを封じ込める国際的な枠組み構築の最初として、巨大IT企業などが世界各国で稼いだ利益に対して、本社が所在しなくても「市場国」がその国で上げられた売り上げに応じて法人課税をできるようにする、多国間租税条約に各国が署名する段取りだ。
当初の予定から2年遅れだが、「グローバルミニマム課税」導入と併せて、国際社会は多国籍企業の税逃れに対する”武器“を持つことになる。
ただし欧州諸国などと、グーグルなど巨大IT企業を最も多く抱える米国とでは大きな温度差があり、年内に条約署名そして議会の承認による発効まで進むのかどうか、懸念や課題はなお残る。