写真:アップストアのアイコンPhoto:Diamond

アップルは、iPhoneなどの自社製品向けアプリの提供ルートを自社プラットフォームでしか認めていない。そして、アプリの売り上げに応じて分け前を渡さなければいけない、「アップル税」とやゆされる仕組みは有名な話だ。このアップルの独占的な地位に対してついにヒビが入りそうなのだが、この話に留飲を下げている人は重要な論点を見落としている可能性が高い。この話をする上で避けては通れない「本当の脅威」を知っていただきたい。(イトモス研究所所長 小倉健一)

イーロン・マスク氏がまた物議を醸す
アップルをTwitter上で批判

 米ツイッターを買収した米テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)がまた物議を醸している。米アップルが、iPhoneなどの自社製品にアプリを提供する「App Store(アップストア)」で、「購入する全てのものに秘密の30%の税金を課している」とTwitter(※)に投稿したのだ。

※以下、社名はツイッター、サービス名はTwitterと表記する

 マスク氏は、ツイッターについて従来の広告収入を柱とするビジネスモデルから、サブスクリプション(有料の定期利用サービス)中心のものへと大転換をする方針だ。本人確認の認証マークを個人にも発行するなど付加価値をつけることでそれを実現するという。

 しかし、iPhoneやiPadなどを通じてツイッターがサブスクリプションの課金をしようとすると、売り上げの最大30%分をアップルに納める必要が出てくる。この30%について、マスク氏は「税金」と呼び、怒りを爆発させたわけだ。

 今、欧州連合(EU)を出発点にして米国、そして日本へと、この「アップル税」を問題視する動きが広がっている。そして、App Storeとは別にアップルが全く関与しない方法でアプリを導入できる仕組みを、アップル(そして、米グーグル)に強制しようとする動きが起きている(1)。

 事業者にとっての手数料が安くなれば、消費者も恩恵を受けられる可能性があるので、私たちにとって歓迎していい動きにもみえる。しかし、安全保障のプロたちはこの動きに断固として反対し、アップルのかたくなとも感じられる態度に賛辞を送っているのだ(2)。

 いったい、何が起きているのか。(1)、(2)と順を追って解説していきたい。